「医療保険の請求をすると相続放棄アウト」 | 『闘う税理士の笑顔経営・笑顔相続・笑顔承継ブログ』

『闘う税理士の笑顔経営・笑顔相続・笑顔承継ブログ』

東京日本橋人形町の税理士のブログです。
 
『私の使命』
・中小企業の人とお金の問題を解決し中小企業を笑顔に!
・争族を無くし家族を笑顔に!

人生理念
『楽・優・厳』
・人生何事も楽しく!
・他人に優しく!
・仕事と自分には厳しく!

今回は2020年12月に発売された書籍
「これだけはやっちゃダメ! 相続対策の「御法度」事例集」
事例集#09で執筆いただいたファイナンシャルプランナー・大杉 育寛さんをお迎えして、
実際にあった相続事例をご紹介していきたいと思います。
テーマは「医療保険の請求をすると相続放棄アウト」
特に負債が残っている場合には要注意!
保険相続の際にありがちな失敗を、実際に起きた事例を基にご紹介します。




■コロナショックに重なった不幸



相談者は38歳の妻。42歳の夫と、10歳の長男・7歳の次男と4人暮らしです。
2019年に飲食店を経営するのに独立したばかり。
開店したばかりにも関わらず、襲ってきたのはコロナショックでした。

当然、飲食店の売り上げは激減。
創業にあたって金融機関からの借入もあり、
持続化給付金やテイクアウト事業、クラウドファンディングなど
様々な手段でなんとか生き抜いている、という状態でした。

さらに、畳み掛けるように不幸が。

なんと、脳梗塞で夫が他界。
相談者と子供たちだけになってしまったのです。
どうしていいか分からなくなり、
まずは生命保険の請求の相談に来たという形でした。




■相続人には3つの選択肢がある



その時、夫が加入していた保険はこのようなものでした。
生前に「自分が亡くなっても、家族に迷惑をかけたくない」という想いから
しっかりした内容で保険に加入していたのです。




一方、夫が亡くなった当時の主な財産状況としては
・預貯金 300万
・借入残高 ▲2,000万
と、合計の差額が▲1,700万になり、負債の方が大きくなっていました。

それであれば保険金を受け取って返済を行うことで、
差額分で現金が余るのでは?と考えますよね。






ここで知っておくべきことは、
相続人には以下の3つの選択肢があるということ。



①単純承認
 …プラスになる財産も、マイナスの負債も全て相続する、という方法
②限定承認
 …財産も負債もある場合に、プラスマイナス0になるまでは返済するが
  差額のマイナスが発生する部分に関しては相続しない、という方法
③相続放棄
 …財産・負債を全て相続しない、という方法


今回であれば、負債である2,000万は相続せずに
保険金は受け取るという方法が一番家族にはいいはずですよね。
生命保険は「受取人固有の財産」。
受取人が妻になっていた場合、そのお金は妻のもの。
つまり、保険金を受け取ったとしても相続放棄は可能なのです。

その場合選ぶべき選択肢は、③相続放棄になるのですが
ある注意点を理解しないと、この選択肢を選べなくなってしまうのです。







■生命保険と医療保険の違い

注意点は以下の2つ。

①亡くなってから3ヶ月以内に手続きをしないと放棄ができない
②亡くなった人の財産を使ってしまうと放棄ができない

①に関しては問題なく対応できたのですが、今回の問題点は②。
先ほどの保険内容を確認すると、生命保険の他にも医療保険に加入しています。

今回亡くなった夫は脳梗塞。
入院・手術をしたのちに亡くなっています。
このような時に保険会社に請求手続きをしてしまうと、
医療保険のお金も、生命保険と一緒にもらうような形になります。
「お金をたくさんもらえるなら、その方がいいのではないか?」と思いますよね。

しかし、ここで問題になるのはこの医療保険。
今回出る医療保険は、誰がもらうべきお金でしょうか?
正解は、亡くなった夫のもの。
つまり、医療保険をもらうことは夫の財産をもらうことになるのです。
こうなってしまうと、相続の放棄はできなくなり
2,000万の負債を返済しなければならなくなってしまうのです。




■その保険内容、本当に合ってる?



今回は保険の請求手続きの前に、この問題点に気付くことができたので
家族に残る財産を多くすることができましたが、
生前のうちにできる取り組みはどのようなものがあったのでしょうか?

たとえば、生前のうちに借入金対策の保険や、
手元にある現金で一時払い保険に加入する方法もありました。
また、考えなければならないのは子供たちの教育資金だけではなく、
長期的に見て、残された家族の生活費用は足りるのかなど、
様々な角度から考えていくことが大切です。

いかがでしたでしょうか?
保険は「万が一」のためのもの。
この機会に、自分が加入している保険や家族が加入している保険は
・本当に必要な保証がついているのか?
・万が一の際に対応できる内容なのか?
もう一度確認し、家族全員で話し合うことが大切ですね。

 

 

動画はこちらから↓

https://youtu.be/zGuQb_9wwmI