ただその一言を、君に。 | やさしい時間

やさしい時間

ときメモGSの妄想小説です。

ネタバレなSSもアリ。
一部限定公開もアリですのでご注意を……。

 彼女がこの学園に入学して3年の月日が流れ、そして迎えた卒業式。もうこの学園で彼女の姿を見る事もなくなるんだ。そう思うと、胸の奥が何故だか苦しくなった。

 僕はあまりにも長い間、自分の感情を殺して生きていたから。本当の感情が良く分からなくなってしまっていたんだ。それは、多分今でも変わらない。
 でも、こうして今、君がこの学び舎から旅立とうとしている。そしてその事で胸が痛んでいる。それが一体どのような意味を示しているのか。


 それは、ほんのちょっとした興味だったんだ。いつも素直で真っ直ぐな君が、ある日唐突に見せた翳りのある表情。思春期の子供たちによくある恋愛の悩み。
 自分では経験のなかったそれを、君を通して知る事が出来たなら。どうしようもなく狡猾でずるい大人の僕は、そんな事をどこかで考えていた。

 でも、やがて僕はそんな歪んだ関心を抱いた事を後悔することとなった。彼を見つめる君の瞳はいつも真っ直ぐで澄んでいて。それが僕の淀んだ部分をより鮮明にさせるような気がした。

 どうして君は、いつもそんなに真っ直ぐでいられるんだろう?
 今にも折れてしまいそうなほど心が弱っていても、どれだけ傷ついても迷っても、君は真っ直ぐ前を向いて立ちあがる。
 僕よりも小さくて非力なはずなのに、驚くほどしなやかに前へと歩を進めていく。


 君のその真っ直ぐで強い光に晒されて、僕は自分の弱さを知った。大人の仮面をかぶって、色んなものを誤魔化して。
 そうやって、色んな事から自分を遠ざけて。傷つかないように、傷つけないように。


 そして気がつくと僕は、どうしようもなく君に惹かれていた。

 君の心には、別の誰かが住んでいるのかもしれない。この想いは叶わないものなのかもしれない。
 けれど、君が教えてくれたから。迷って傷ついて、それでも前へ進んでいく強さを。

 だから、ただ伝えたい。
 この想いを君に伝えることによって、僕は傷つくことになるかもしれない。
 でも、それでも…。


 卒業式が終わったら、灯台へ行こう。傷ついても、叶わなくても、それでもいいから…。

 ただ一言を、君に伝えに。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


昨年10月ごろに書いたSSが今頃出てきました(笑)
PC内のフォルダをちゃんと整頓しなくては(;´▽`A``

若親友告白直前の心境のようなものを捏造。


←ただその1クリックを、私に!(笑)


人気ブログランキングへ←ついでにもう1クリック!