またまた卒業後の妄想話を…。
設定としては…。
はね学を卒業して2年。各地に散っていた旧友たちが成人式のために帰郷。
せっかくみんなが集まるので、同窓会をすることに。
かつてのクラスメイトと会うのは楽しみだけど、何となく気が進まないデイジー。
その理由は…2年前、高校の卒業式の日、あの灯台で…。
【2度目のチャンス】
今日は成人式。高校卒業後、進学や就職であちこちに散らばったかつてのクラスメイト達も、今日の式典の為に戻ってくるという。
「せっかく、みんな戻ってくるんや。成人式の後、同窓会でもせぇへん?若チャンも呼んで」
そう言い出したのは、西本はるひ。今はパティシエを目指して頑張っている。
みんなに久しぶりに会うのは楽しみだ。でも……。
デ(やっぱり、気まずいよね…)
2年前の卒業式の日、海辺の灯台。あの日の事は、忘れたことがなかった。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。気にしなくていいって、言われたんでしょう?それに、そんな事で逆恨みをするような人じゃないと思うわ」
そう言ったのは、水島密。卒業後、ウィーンに音楽留学していたが、成人式の為に、数日前に帰国している。
デ(はぁ…。気が重い…)
楽しみだったはずなのに、会場に近付くにつれ、だんだんと足が重くなる。
デ(やっぱり、はるひに電話して、帰ろうかなぁ…)
?「○○さん」
デ「あ、ひーちゃん…」
水「あんまり遅いから、来ないのかと思っちゃった」
デ「うん…」
水「…まだ、気にしてるの?若王子先生の事」
デ「う……」
あきれた、という風に、密がため息をつく。
水「ま、○○さんらしいと言えば、らしいけど。…ね、行こ?」
デ「う、うん」
―同窓会・会場―
?「あ~、○○、遅いやんか~!もう来ぃへんのかと思って、心配しとったんやで」
デ「あ、はるひ…。ごめんね、遅くなっちゃって」
西「ひそかっちも一緒やったんやな」
水「久し振り、西本さん」
西「相変わらずベッピンさんやなぁ、ひそかっちは。ウィーンの方はどうや?」
水「うん、楽しくやってるわよ」
西「そうかそうか~。ええなぁ、あたしも海外留学とかしてみたいわぁ。…あ、そうや。あんたら、ここに来る途中で若チャン見ぃへんかった?」
デ「え?」
水「若王子先生、まだ来てないの?」
西「そうなんや。ちゃんと出席って、返事もろてたんやけど…。どっかで迷子になってるんやろか。あたし、ちょっとその辺見てくるわ」
バタバタと立ち去るはるひ。
水「ふふ、西本さんは相変わらずね?じゃあ、私たちは中に入りましょうか?」
デ「そうだね」
会場の中は、懐かしい顔であふれていた。2年前より、少し大人っぽくなったお互いの姿を笑いあったり、互いの近況を語り合ったり。
みんなでワイワイ話していると、あの頃に戻ったかのようだ。
西「はいはーい。みんな注目!お待ちかねの若チャン先生連れてきたで」
若「すみません。遅れちゃいました」
男子「若ちゃん、おっせぇよ~!」
女子「もう、来ないのかと思った~」
若「すみません。心配をかけてしまって…」
男子「若ちゃん、相変わらずだなぁ。そんなんだから出世しないんだぞ」
若「やや。痛いところを…」
相変わらずのやり取りに、みんなくすくす笑っている。
本当に、相変わらず…。変わってないんだ、若王子先生…。
デ(ふぅ…。ちょっと騒ぎすぎちゃった。外の空気を吸って来よう)
高校時代に戻ったみたいに、みんなでワイワイおしゃべりしていて、すっかりはしゃいでしまった。
少しお酒を飲んだせいで、顔も火照っているみたいだし。少し外に出て休憩しよう。
デ(……あ、あれは)
まだ騒いでいるみんなに気取られないように、そっと会場を抜け出すと、月明かりの下で佇む人影を見つけた。
今日は月が明るい。その青い光を受けて月を仰ぐその姿に、思わず足を止めてしまった。
その人影が、気配を感じたのか振り返った。
?「○○さん…」
デ「若王子先生…。どうしたんですか、こんな所で…」
若「うん…。ちょっと考え事をしてました。君はどうしたの?」
デ「私は、外の空気を吸いに…」
若「そうでしたか。…○○さん、楽しんでますか?」
月の光を受けて、ふんわりと優しい笑顔を浮かべる若王子先生。昔と変わらないその笑顔に、少しホッとした。
デ「はい。若王子先生も、楽しんでますか?」
若「うん、楽しんでます。実は、こうして元教え子たちと酒を酌み交わすのに憧れてたんです。だから今日の事は、とても楽しみにしてました。…でも」
デ「…?」
若「ちょっと、緊張もしてました」
デ「緊張…?」
若「うん…。きっと、君も来ていると思ってたから」
デ「あ…。私…」
一瞬で、心の奥底にあったモヤモヤが噴き出してきた。やっぱり…やっぱり、気まずいよね。
若「あ、別に君を責めているわけではありませんよ?君に会うのはとても楽しみでしたから」
私の感情を読み取ったのか、少し慌てた様子で先生が言う。
若「君は、昔も今も、僕にとって特別な人です。だから、ちょっと緊張しました」
デ「若王子先生…」
若「あれから元気にしてましたか?彼とは上手く行ってる?」
デ「あれから…。私、その…」
若「…何か、色々あったようですね?」
デ「すみません。私…本当は、ずっと考えてたんです、若王子先生の事を…」
若「先生の事を?どうして?」
デ「あの日…。卒業式の日、私は…」
若「あの日の事なら、気にしなくていいです。先生なら大丈夫だから。…確か、あの時にも言いましたよね?」
デ「はい。でも…。私、気がついたんです」
若王子先生が、不思議そうに小首をかしげた。
デ「私…バカだったんです。本当の自分の気持ちに気が付いてなくて、若王子先生の事を傷つけてしまって…。なのに、後になって…」
若「○○さん」
デ「私、本当は……。本当は、若王子先生の事が…」
若「……」
若王子先生の顔から、すうっと表情が消える。きっと、困ってるんだ。
デ「…すみません。今更、こんな事を言っても先生を困らせるだけですよね」
若「僕の気持は、きっとあの日から何一つ変わっていません。だから、きっと君の言葉を聞いても、困らないと思いますよ?」
デ「…え?」
若「そうだ、○○さん。今日は、この後、何か予定はありますか?」
デ「いえ、特にはないですけど…」
突然の話題の転換についていけなくて、思わず先生の顔をまじまじと見てしまった。
先生は、小さく笑っている。
若「じゃ、二人でこのまま、抜け出しちゃいましょうか?」
デ「えぇ!?で、でも…」
若「大丈夫。みんな、ずいぶん盛り上がってます。きっと二人くらいいなくなっても気がつきません」
デ「そ、そんな事はないと思いますけど…」
?「あ~!どこに消えたかと思ったら、こんな所におったんか!」
突然、背後から声をかけられビックリして振り返ると、そこには見慣れた顔が並んでいた。
西「しかも○○まで一緒に…」
小「二人で一体、何をしてたんですか?」
若「や、西本さんに小野田さん。水島さんと藤堂さんも。皆さん、元気でしたか?」
水「はい。若王子先生もお元気そうで、何よりです」
藤「相変わらず過ぎて呆れるくらいだね」
西「で、いったい二人で何してたん?」
はるひの問いに、若王子先生はにっこりと笑う。
若「や、実は先生、ちょっと飲みすぎちゃいまして。彼女に介抱してもらってたんです」
藤「…そんな風には見えなかったけど」
西「大丈夫なんか、若ちゃん?」
若「はい、○○さんのおかげですっかり。でも、今日はこれで帰ろうかと」
小「そうですか…。お一人で大丈夫ですか?」
若「あ、大丈夫です。○○さんが送ってくれるそうです」
デ「…え?」
突然の若王子先生の言葉に、訳が分からず先生の顔を見上げた。先生は相変わらずニッコリと笑っている。
水「ふぅん…。そう言う事なんだ」
デ「え、ええ?」
西「そしたら、しゃあないなぁ。○○、若ちゃんの事、よろしくな!」
藤「若王子…。○○の事、泣かせたりしたら承知しないからな」
若「もちろん。じゃ、○○さん。帰りましょうか?」
訳が分からないうちに、若王子先生が私の手を取ってニッコリと笑いかけてきた。
小「えぇ?み、皆さん何を言ってるんですか?」
水「チョビちゃんには、まだちょっと早いお話かなぁ」
小「まだ早いって…みんな同い年じゃないですか!それに、チョビじゃなくて千代美です!」
藤「ハイハイ、チョビは黙ってな」
西「みんなには私らから上手い事言うとくから~!」
何だかよく分からないうちに、本当に二人で抜け出してきてしまった。
デ「ホントに抜け出してきちゃいましたけど、良かったんでしょうか?」
若「大丈夫です。先生が付いてなくても、みんな、もう立派な大人ですから」
そっと隣の若王子先生の顔を窺うと、先生は何だかとても楽しそうだ。つながれた手が暖かい。
デ「…若王子先生、どこに行くんですか?」
若「そうですね…。じゃ、先生のアパートなんてどうでしょう?」
デ「先生の、アパートですか?」
若「さっきのお話の続き、ゆっくり聞かせて下さい。あ、もちろん今日は帰しませんよ?」
デ「…え?」
若「と、言うよりも…。寝かせないかもしれません」
デ「…え、えぇ!?」
若「君も、もう大人です。先生の言ってる意味、分かりますよね?」
デ「あ、あの…」
若「ふふふ、そんなに困った顔をしなくても…。冗談です」
デ「もう!若王子先生!」
若「…知ってますか?チャンスの神様は、2回しか訪れません。しかも、チャンスの神様には前髪しかない」
デ「…?」
若「つまり、2度目のチャンスを見逃したら、もう2度とつかめないって事。きっとこれは2度目のチャンスなんだ」
デ「若王子先生…」
若「僕は、もう2度と君を失いたくない。だから…」
若王子先生の空いている方の手が、私の頬を撫でた。大きくて、暖かい手。
若「もう…君を離したくない」
デ「若王子先生…」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
卒業式の日に、若王子先生の告白を断っちゃったという設定です。
もう成人してるから、ちょいエロ若王子先生でもOKかと(笑)