102、学力の経済学 中室牧子
上記の本を最近に読みました。しっかりとデータから分析する教育の本はなかなかないので、参考になる部分がありました。また、この本の著者は教育の「現場感」に欠けるので、僕の経験を少しプラスさせていただければ、いくつかの点で有意義な見解になるかと思いました。
いくつか気になった要点を上げてみます。
・ご褒美は朝三暮四を参考に
ご褒美の有効性を言っているのですが、有効なタイミングがあるようです。これは僕もよく感じるところです。
例えば、ご褒美を与えるときに
・次のマンスリー(月1のテスト)でクラスがあがったら
・今日の勉強を目標までしたら
の2択ですと、小学生ほど、「ご褒美が直近」のほうが効果が高いそうです。これは僕もよく感じるところです。「定期テストでいい点をとったらご褒美」と言っても、現在成績が悪い子、精神が幼く粘りがない子には効果が薄いと常々思っていました。
すでに頑張っているような子は、そうでもないのですが、やはり人間は眼前のものに飛びつきやすい性質があるように思います。
漢文の「朝三暮四」では、サルにご褒美(トチの実)を挙げるときに、「朝3、夕方4」 だと嫌がったのに「朝4、夕方3」だと喜んだ、という「一緒やん、サルってアホやなー」的な切り口になっています。が、意外とこれが真理をついているのかもしれません。そちらの方がうまくいく側面もあるのです。(サル並みの子には、ということか、笑)
・ご褒美の対象を「インプット」にする
これも、お子さんの成績が良いご家庭とそうでないご家庭で差があるように感じていたことの一つです。
「○○点とれてえらいね」「クラスがあがってえらいね」ではなく、「本をそんなにたくさん読んでえらい」「今日も宿題がしっかりできてえらい」というテストでの結果ではなく、努力過程をほめ、認めていく方がよいということです。この本では、褒め方に関して何点か書かれていて、おもしろいです。
褒めることはよいこと、と言われて久しいですが、僕はゆとり世代以降から、「変に褒められて思い上がっている」パターンの子供を多く見てきています。そういう子たちは、粘りがなく、何かをなすのにそのための努力が持続しないという特徴を持ちます。
能力を褒めるとやる気を蝕む、などの見解がデータとともに非常に得心の行く説明を持って説明されていました。ただ、日本の教育界ではデータの公開を研究用でもほとんどなされないそうで、海外データばかりなのが口惜しいところではあります。
・勉強の効果は内容ではない
また、やはり勉強は「自制心」を育てるためにこそやるべきであろうという示唆も得られます。上記の性質とは矛盾するのですが、やはり収入が将来高くなったり、大きなことをなす人は眼前だけではなく、「遠い将来」まで興味を失わず努力し続けることができます。
そのような「我慢強い」性質を得ることそのものが、勉強や受験を通じて試されることでもあります。我慢強くなるためにも、うまくご褒美を設定したり、自分の精神の持っていき方を工夫したりと、できることが結構あります。それもやらずに才能のせいにして、受験を放棄することがもっとも愚かしいと僕は思います。
<嘘をつかない><他人に親切にする><ルールを守る><勉強をする>などの躾項目の達成項目が多い家庭のご子息ほど収入が高いというデータもあるそうです。昭和ではこの辺は当たり前ではあったのですが、今の日本ではこの当たり前を意識的にしなければいけない部分はあると思います。
これらの躾がなっていると、運命を分ける「自制する」という習慣がつきやすいのです。
この能力は教育界では「GRIT(やりぬく力)」と言われていて、TEDでもダックワース教授という方の有名なプレゼンがあります。リスニングの訓練にも良いので、TEDはおススメです。ご参考までに↓
達成力は、才能とは無関係、もしくは努力で変えることができる、という見解は、大いに賛成です。
この本ではどんなに幼児教育を施しても、効果は8歳から10歳くらいまでしかなく、その後は努力を忘れると凡人と同じになってしまうというデータも示されていました。ここも、「小学期は天才で高校以降凡人というパターンが多い」という僕の経験則に合致します。
たまにこのブログでも出している僕のいとこは神童と言われ、開成中・高にもいった男なのですが、やはり高校以降がしょぼすぎてお手本にはなりませんでした。
高校期になっても、わがままに見える自我意識と、人を食ったようなところだけは残っていて、素直に努力することができていないように感じました。また、小学期まで天才だったがゆえに、僕のように泣きじゃくりながらの努力経験が少ないようにも感じました。そういう意味で、青年期以降は僕のほうが達成力があるし、今も負けていないような気はします。
うちのいとこだけでなく、このような例が巷にはたくさんあり、結局は「どれだけ努力を継続できるか」というポイントが大事なのだと今では確信に至っています。僕が授業やコンサルでしゃべる言葉は、大体がこの方針に従っていて、子供の状態を感じたり考えながら「今言うべきこと」を話しています(話せているかはわかりませんが、話そうとしていますw)。
では子供が努力を継続させるために大人や周りはどうすればいいのか、それがまだわかっておらず、考えているのが今の教育界の段階です。
僕は受験などを通して、敗北したり一喜一憂する中で努力することが、継続力の大切さに気づき、達成力を生むきっかけになると信じています。収入のことなどを考えなくてよい子供時代のたった1年の努力を継続できるのかどうか、まずはここから試されています。
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