そこで、遅々として中々進みませんが、このコーナーを少し充実させておきます。今日は海外文学編です。
海外文学の問題点は「訳者のセンス」が作者の問題とは別にかなり関わっていることです。やはり日本で人気のある海外モノは、ミステリーが特に顕著ですが、訳者のセンスが良いのです。詩的情緒といいますか、軽やかなリズムを持つ和訳のものを選ぶとよいです。
これは、学校などで英語の和訳をするときにも気をつけてほしいのですが、単に真面目に訳しているだけではつまらないのです。意訳とまでは行かなくても、「カッコいい」「リズムのいい」表現というものを中学以降の和訳の機会には遊び感覚でやっておくとよいと思います。
また、公立中の方は、私立に比べて圧倒的に和訳の機会が少ないですので、意識的に「全訳」する意識を持っていましょう。それも、難しい1文だけではなく、まとまった文章を和訳することで、国語方面のいろんな能力が上がってくるはずです。(と、ちょくちょく勉強方面の話題も入れていきます)
今日紹介するものは、ほとんどが複数出版社から出ていますので、その中でなんとなくでも本屋でペラペラとめくってみて、訳がよさそうなものを選ぶことをおススメします。別に原語でよむ必要はありません。原語版も気になったら買ってみるのも面白いですが。
<子供を伸ばすオススメ100タイトル 海外文学編①>
11、レ・ミゼラブル ビクトル・ユーゴー
レ・ミゼラブル〈1〉 (岩波文庫)/岩波書店

¥1,037
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フランスの超有名文学にして普及の名作です。フランス革命という社会的な題材をとりながら、そこの中で必死に生き抜く人間模様が感動を誘います。ミュージカルとしても根強い人気を持ちますね。
貧しさにあえぐキョウダイたちを救うために犯した軽罪で投獄され、脱獄したジャン・バルジャンが主人公です。怪力で豪胆、前半はかなりマッチョな印象を受けますが、有名な銀食器をパクる場面(銀食器をパクったのに、神父さんから「それはあげたんですわー」と言われるシーンですね)などから「他者への愛情」に目覚めていきます。身寄りの無い(母親は登場した)女の子、「コゼット」と出会うことでさらに愛情を持つ人物へと変わっていきます。
フランス革命が勃発し、パリ市街へコゼットと恋仲になったマリユスを救いに行くジャン・バルジャン。最後は涙無しには読めません。
特に新潮文庫版では5巻立てで、長い道のりのゴールとして、感動もひとしおです。5巻は分厚いのですが、僕はあっという間に読めてしまい、純文学なのに涙しながら読んだのを覚えています。(電車の中でw)
1巻はなかなか物語が動かず、時代背景が延々と述べられていたりするので、厳しいかもしれません。小学生の方は、青い鳥文庫版などでも十分に楽しめます。
ミュージカル版も名曲ぞろいですので、DVDから見てみるのも良いでしょう。ミュージカル版だと中盤、いきなりジャン・バルジャンが市長になっててビビりますが(笑)(ま、小説でもけっこう唐突感はあったが、経緯は述べられていた)
ユゴーはやはり、政治家であり、文学家であり、やはり「濃い」人物です。読んでおくべきでしょう。
12、ファウスト ゲーテ
ファウスト〈1〉 (新潮文庫)/新潮社

¥637
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やはりこれをオススメしないわけにはいきません。ドイツ文学の最高峰、ゲーテの不朽すぎるほどの名作です。有識者では読んでないと恥ずかしいくらいの名作です。個人的には、坊っちゃんとか読むよりいいと思います。
この世の叡智を極め尽くした老人ファウストが、「もっとすげーもん見せろ、体験させろ」とメフィストフェレスという悪魔を呼び出します。魂を上げる代わりに、悪魔の力で様々なこの世の楽しみを味わおうとします。もちろん、そのうち、期限が来て魂をあげることになるのですが、そこにどんでん返しが待っています。
手塚治虫さんの「火の鳥」のように、読む年齢によって感じ方がかわり、10年おきくらいに読みたい作品です。ある人はラストシーンで涙を流し、ある人は「なんじゃそりゃ~」といきり立ちます。
進学校の中学生ならば問題無く読めると感じます。詩作なので、よくわかんない部分があるかもしれません。
が、よくわからなくても構わないのです。「この世ってこんなもんだよな」という達観にも繋がる作品ですので。逆にわかった気になったほうが危ないかもしれません。火の鳥も、最初、よくわかんないじゃないですか(笑)(もちろん、火の鳥も後にこのオススメ100冊に出てきます)
海外文学はキリスト教の感じがわかるのも大きいです。僕らは全く考え方の基本自体が違う人といつか出会います。でもやはりわかりあえる部分があると思います。そういう意味でも、他者への寛容を身につける上でも読書は大きいです。
この『ファウスト』はゲーテがほぼ一生(60年近く)をかけて二部構成で完成させました。ある意味、芸術家としての一つの到達点を垣間見ることができます。このあたりの名著も知らずに勉強している、究極を目指している、というのがある意味ナンセンスなのです。それくらいのパワーがある作品です。
僕はこれの岩波版を親友に貸してもらって読みました。当時はお金がなく、大切に大切に、ゆっくり読んだ覚えがあります。そのような思い出ができるのも読書の良いところです。
13、若きウェルテルの悩み ゲーテ
若きウェルテルの悩み (新潮文庫)/新潮社

¥497
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これはゲーテ作の中でもファウストとセットみたいなもんです。ファウストが60年かかっているのに対し、これは好いた惚れたの話で、ゲーテの実際の体験から書かれているので一か月ほどで完成させています。そういう意味でも2つをセットに読んでおくと良いのです。
この作品は基本的に友人への手紙を軸に進んでいきます。とりあえず、シャルロッテという女の子に狂おしいほどの恋心を抱き、それを解決しようとやや劣等感の強い男子がもがくという、割りと親しみやすい話です。
「なんやそれ」というのが、僕の読み終わった時の感想ですw でも読む価値はあると思います。生々しい感情の波を味わってみるのもなかなかよいです。ファウストに比べると本も薄いですしね。
この辺が気に入れば、いよいよ、ヴィルヘルム・マイスターシリーズに手をだすと良いでしょう。
14、神曲 ダンテ
神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)/河出書房新社

¥1,026
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世界的な名作といっても、大人でも読んでいない人が大半のはずです。ましてや中世以前のものなど、日本では源氏物語くらいの扱いです。
大人の方の読書をみていると、実利的な本が多く、いわゆるナマの感動から遠ざかっているな、と思うことが多いです。もしくは極端に娯楽性の強いもの、色情感の強いものばかりになってはいないでしょうか。それでは、感性の広がりからますます遠ざかっています。そんなでは、実社会のストレスに負けるのも当然だと思うのです。
子供の頃からそのような感じでは、いったいいつ「豊かな感性」を形作ればよいのでしょう? ということで、時には、このような「イメージ一発」のものを読んで見ることをオススメする次第です。
オススメしているのは河出文庫版です。この版では、解説だけでなく絵画も多く収録されていて、1300年台の世界観を味わうことができます。また、700年ほど前の人々と僕らの意識がほとんど変わっていないことも新鮮な驚きになります。
地獄編、煉獄編、天国編と三部作なのですが、一番面白いのはやはり冒頭の地獄編です。人間は死んだらあの世にいきます。罪のある魂ほど地獄に行くのですが、その罪の区分がやはりキリスト教的であったり、東洋思想と共通のものであったりして、面白いです。
ダンテ(自分の名前と同じ主人公)は、生きたまま、師ヴェルギリウスに連れられてあの世を旅していきます。生きていた時の友人に会ったり、種々の罪でその咎を受けている人々を垣間見ていきます。地獄の化物とかも面白いです。
ファウストにつづいて、またしても詩作であり、読みにくい部分もあるかもしれませんが、これも、「なんとなく」でいいのです。要は世界観を味わうことが大事です。イマジネーションを刺激します。もしかしたら、昔の人はこのくらいのことが感じられたのかもしれません。
15、車輪の下 ヘルマン・ヘッセ
車輪の下 (新潮文庫)/新潮社

¥367
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進学校の生徒ならば、ハンスの気持ちがわかるはずだ。
ハンスは村一番の秀才で、自分に自信はまったく持てないものの、神学校に合格する。が、入学したそこはハンスにストレスしか与えない。勉強だけをして生きていくことが正しいのか? 自身のアイデンティティが劣等感にまみれたヘッセの生々しい筆致で描き出される。
ドロップアウトして村に戻って心機一転しようとするハンスだが、大きな挫折感には勝てなかった。色恋の話もありつつ、最後は悲劇的な結末が待っている。
とまあ、『進』学校(僕らの漢字はこっちね)に通う僕達からすると、「わかるわぁ」という話が多いです。この時代のドイツの神学校とは、まさにいま現在の日本の進学校に等しいです。
ヘルマン・ヘッセは「詩人になれないならば何者にもなりたくない」と言っているくらいの人で、今で言う夢追いフリーターみたいな生活をしています。
また、実際にハンスと同じようにノイローゼになっているようです。小説を読んでいると、「こいつ、よえぇな」と思ってしまうのですが、中学生くらいといえば、こんなものかもしれません。僕も相当に精神的に弱かったです。
この作品でハンスは最期、死んでしまうのですが、ヘッセは死んではいません。それは、母親の愛情があったからだ、とヘッセ自身も言っているようです。やはり、青春時代に困難はつきもの。避けて通るべきではありません。でもその困難に子供ひとりで立ち向かわせてはいけないのでしょう。直接ではなくても何らかの支えが必要なのだと僕のこれまでの経験でも思います。
まあ、進学校に行くつもりまたはすでに在籍しているなら、このような作品で癒される? のも良いでしょう。個人的には同じくヘッセの作品、『デミアン』も繊細な心理が描かれていて良いです。受験によく出る小説を10冊読んでも感じられないものがあるでしょう。
うーん、また長くなってしまった……。一度に5冊が限界のようです。気長に見ていただけると嬉しいです。
いつも読んでくださってありがとうございます。
お問い合わせいただいたメールに返信はできていますでしょうか? 迷惑メールとして処理されてしまって届いていないということがたまにあります。僕はどんな内容でも、1週間の間に必ず返信は行いますので、1週間経ってもこない方はお手数ですがもう一度しっかりタイトルなどもいれて送っていただければと思います。問題集に載っているアドレスの方にだしていただいても構いません。
5年生や受験学年でない方のコンサルも受け付けております。また、遠方の方も交通費さえ頂ければどこにでもいきます。
教え子の医学部留学生がブログをはじめました。医学部にご興味のある方はどうぞご覧になってください。医学部生のきつさや海外生活なんかの赤裸々なところがわかるかもですよ、むふふ。
こちらです。
http://ameblo.jp/harryhawk-bp/entry-11385618245.html
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