僕の問題集、「算数単語帳」が発売されてそろそろ一週間がたちます。偏差値が40台くらいの学校では面白いように「同じような問題」が出題された、との声も聞きました。
早速ミスプリが見つかったりと、「あれまあんなにチェックしたのに~」ってなこともありましたが、皆さんに愛してもらえて算数単語帳君も喜んでおりますヘ(゚∀゚*)ノワーイ
このあたりで、僕がこの問題集を出した意図を明確にしておきたいと思います。
僕が受験算数を受け持ち始めてずいぶんになります。今の塾につとめてからは、中学数学、大学受験用高校数学までみるようになりました。これは僕の青春時代を知っている人に言わせると、「シンジラレナーイΣ(゚д゚;)!」なことなんです。
僕が他の算数の先生と明らかに違うところは子供時代に算数が「ものすごくできなかった」部類の子供であったという点です。はっきりいって基本的に算数が嫌いなんです(笑)あ、数学も。そんな算数教師います?
ですから、算数のできない子のことはよくわかります。
僕は幼い時から公文式をしていたので、計算はかなり速かったと思います。あれは今でも幼児教育にはいいなと思っています。ですが、計算がいくら早くても算数ができず、悩みました。算数のできる子はほとんどなんの努力もなく(ように見える……)できてしまう子が多く、そういう子がとてもうらやましかったのを覚えています。
中学時代にはなぜか、幼少時に「数学の天才児」でならしたようなヤツらと友達になってしまい、よけいに劣等感を持つようになりました。ま、宿題は100%彼らに教えて貰ってたので、助かりました(笑)
その中でもずば抜けて数学のできるM君というのがいて、うちの入試を1位で受かったヤツなのですが、彼にある日聞きました。
「おまえ、数学できすぎやろ~(-"-;A。なあ、数学の問題って、みたらまず何考えんの? 教えてやー」
「は? そやなぁ……。まずパッと見たら2,3通りくらいやり方が思いつくから、そこからおもろそうなやり方探せばええやーん」
(……天才だ(・_・;)。そんなにやり方思いつかねー。そりゃ勝てんわー(T▽T;))
と思いましたが、このセリフは何故か覚えていて、指導する立場になってその真意に気づきました。
M君は確かに思考力もずば抜けで、教わっていて「は?」ということが多かったのですが、基本パターンを熟知していたのです。僕は「数学は暗記ではない、理解するのだ」とかたくなに思っていたので、基本の解法パターンが頭に入っていませんでした。その基本パターンを瞬時に組立て、応用問題に向かっていくからこそM君はすごいのでした。ヤツは数学オリンピックにもでてましたから。
まあ、M君に関しては天才ゆえに、その後大変な人生がまっているのですがそれはまたおいおい。
とにかく、そうこうしているうちに需要と供給の関係で算数を毎年教えていて、僕は気付きました。
「算数(数学)やってても思考力伸びないな……」と。
そうなんです。今の教育の在り方では思考するというよりは、基本パターンを暗記している子のほうが伸びてしまうんです。そういう意味で算数数学教育はゆがんでいるんです。ほんとに思考力を伸ばしたいなら、もっと暗記せずとも取り組める課題であるべきなのですが、そうではないんです。
高校数学になるともっと大変です。いきなり大変になります。というのは、基本パターンが多すぎる(やれサインだコサインだ複素数だのと……)からです。その場合、公式を理解し、覚える量を減らすことが重要になってきます。が、そんなこと、しません(笑)きらいですから。
結局、東大レベルのものに対応しようとすると、標準問題のパターンをぬかりなくやり、そのうえで思考力がいる、なんてことになります。それまでの教育で思考力は育っていないので、ほんとに参ります。参りました(/_;)/~~
そういう矛盾点をついたのがこの「算数単語帳」君です。
こういう視点の本が流行るといいなと思います。 いつの日かこんな本が売れなくなって通用しなくなるような時代がくると、きっと算数教育はよくなったことの証なのだと思います。
そのような算数教育を望みます。
え、じゃあ思考力をつけるにはどうすればいいかって? たぶん、思考力の必要性が薄れてきた時代なんですよ、今の時代って。
考えることより、直感やフィーリングがきちんとしたやさしい子がこれからの時代に必要なのではと思う今日この頃です。
でもバランスは必要です。いらないわけではありません。ヒントは理科と国語にあると思っております。
あ、ほんとに長くなったので今日はこの辺で。いつも読んでくださってありがとう御座います。