日本人としてとても大切な言葉と思い、時々読み返す「美しい日本 四つの特徴」という多田富雄さんの「ことば」をご紹介します。

私は、「美しい日本」という言葉を折々使ってきました。
その美しい日本のルーツは何でしょうか。
四つの要素を挙げたいと思います。

まず、「アニミズム」(animism)の文化を指摘したい。自然崇拝、自然信仰です。

この国には一神教は育たなかった。
絶対的な神はもたないで、自然の中に無数の神を見つけ、それを敬ってきました。

宗教対立で戦争を招くことはなかったのです。
環境を守る、日本のエコロジーの思想も、ここにルーツがありました。


次は、豊かな「象徴力」です。

俳句、和歌は、事実の記載ではなく、たった一言で世界を表現しました。

日本の芸術は、この象徴力のおかげで世界が尊敬するユニークな美を作り出したのです。
能、歌舞伎などの芸能、茶道、華道に至るまで、豊かな象徴力に支えられています。
こんな民族はありません。


次に「あわれ」という美学の発見をあげたいと思います。

「もののあはれ」はもちろんのこと、もっと広く、滅びゆくものに対する共感、死者の鎮魂、人の世の無常、弱者への慈悲など、あわれなものへの思いが日本の美の大切な要素になっていると私は思います。

強さ、偉大さ、権威などを価値とする外国とは違った日本独自の価値観です。
それは日本人の心の優しさ、美しさ、デリケートさの根源です。


そして、それらを技術的に包み込む「匠の技」がある。

美術はもちろん、詩歌や芸能でも、細部まで突き詰める技の表現がある。
「型」や「間」を重んじる独自の美学です。

それはまた日本の優れた工業技術のルーツでもあります。

この四つの特徴が、日本の美しさを世界でも独自なものにしてきたし、日本人の行動の規範にもなってきたと思います。

2008年6月20日の朝日新聞に<「!聞く」東大名誉教授 多田富雄さん 9
「美しい日本 四つの特徴」>として掲載されました。