◆伊勢雅臣『世界史に刻んだ明治日本の奇跡』を読み解く
★サブタイトル
→開国から60余年で国際連盟理事国へ。
★要旨
・独立維持のための富国強兵の原動力は、
近代経済の発展にあり、そのためには
起業と資本の蓄積による自由市場経済を基盤とする、
と見抜いたのは、
当時の先人たちの慧眼だった。
・不思議に思うのは、
「五箇条の御誓文」で、議会制民主主義や
自由市場経済など近代的な政治経済体制の構築を、
「神武創業の始」の精神に立ち戻って行おうとしたという、
近代化と歴史伝統の奇妙な組み合わせだ。
・近代的政治経済システムと、
わが国の神武創業以来の伝統の間に、親和性があった。
・幕末維新において、
日本の文化伝統を守り、
それに根ざしたエネルギーを引き出すことが、
不可欠だった。
その学問を提供したのが、水戸学だった。
・伊藤博文は、ヨーロッパで師事したシュタイン教授から、
「法は民族精神・国民精神の発露」であり、
国民の歴史の中から発達していくものとする、
当時ヨーロッパを席巻していた歴史法学の説明を受けた。
・日本の歴史に根ざした「機軸」とは何であるべきか。
伊藤がヨーロッパで研究を進めていたのと同時期に、
国内に残って、
古事記や日本書紀など日本の古典研究に打ち込んでいる部下がいた。
井上毅(いのうえ・こわし)である。
・井上は、古事記の中に、
「知らす」と「領く(うしはく)」という、
2つの異なる統治概念を発見した。
・井上毅は、1844年生まれ。
4歳で「百人一首」を全部暗記して、
神童ぶりを発揮した。
23歳で明治維新を迎え、
1872年に、司法省から抜擢され、
フランスに留学して、司法制度を学ぶ。
・井上は、多くの留学生が陥った、
西洋崇拝も日本卑下もなかった。
「西洋に何を学べば、日本の独立と日本らしさを保てるか」
という一点に徹して、
研究したのだった。
・鉄製の蒸気船になると、
船をつくるにしろ、航海するにしろ、
たくさんのことを学ばなければならない。
・主な教授科目だけでも、製鉄、造船、砲術、
蒸気機関、航海術、運用術、それらのための、
数学、天体観測、物理、化学などがある。
幕府がつくった「長崎海軍伝習所」では、
オランダ人教官が手分けして、教えた。
・幕府と諸藩から派遣された数百名の伝習生が、
これらを学んだ。
教師団長のカッテンディーケ大尉は、
日本人の過度の好奇心に驚いた。
彼は、日本人伝習生が、
好奇心の赴くまま、無秩序に衝動的に、
学びたがるとこぼしている。
・日清戦争の黄海海戦を観戦した、
米国のマクギフィン海軍少佐は、次のように記している。
→
「日本艦隊が、まるでひとつの生きもののように、
有利な形で攻撃を反復したのには、
驚嘆するほかなかった」
・「わずか50年で世界一流の海軍国になった」原動力とは、
一人一人が、
軍艦や艦隊の全体目標をよく理解した上で、
その実現のために各自が主体的に、
自分の「処を得」て、その一隅を照らす力である。
★コメント
現代の素晴らしい日本というのは、
先人たちが苦労して、命を懸けて、
守り抜き、必死で作り上げてきたものだと実感した。
彼らができたのだから、我々もできるという気概を持ち、
各自の場所で、全力を尽くしたい。
海外から学ぶことも大事だが、
先人たちの歴史から学ぶことの大切さを
伊勢さんからの本で知りました。

