◆北野幸伯さん『新版・日本の地政学』を読み解く


★要旨


・ロシアがウクライナに侵攻した「地政学的理由」について考察する。


・前後半で、
「ロシアにとっての緩衝地帯の重要性」
「緩衝地帯をめぐる、ロシアと欧米の争い」
「プーチンのアグレッシブな言動に大きな影響を与えている、ロシアの地政学者」
についてお話しする。


・世界地図でロシアを見ると、
最初に気づくのは、その「巨大さ」である。


・ロシアの面積は約1700万平方キロで、世界一。
2位のカナダの1.7倍。
日本の、約45倍の面積を有している。


・悪意を持って世界地図を眺めれば、
ロシアの地形は、
「どこからでも攻め込むことができる」ことに気がつく。


・こういう地政学的地位にあるロシアの支配者は、
広い国土を守るための方策を考えた。
それは「緩衝地帯をつくること」である。


・ロシアにとって、旧ソ連と北朝鮮は「緩衝地帯」なり。


・プーチンは、
旧ソ連圏を「緩衝地帯」「勢力圏」と見ているため、
他の勢力が旧ソ連圏にちょっかいを出すことを、とても嫌う。


・2022年2月にウクライナ侵攻が始まるずっと前から、
欧米、特にアメリカとロシアの前哨戦は始まっていた。
構図は、
「アメリカが旧ソ連圏を奪いに行き、ロシアが対抗する」
ということ。


・ロシアが「勢力圏」「緩衝地帯」と考える「旧ソ連圏」で
起こった大事件は、
2014年の「クリミア併合」だ。


・プーチンの思想に大きな影響を与えたのが、
ロシアの地政学者アレクサンドル・ドゥーギンである。


・ドゥーギンは、
欧米では「プーチンの頭脳」と呼ばれている。


・ドゥーギンは、
「ルースキー・ミール」(ロシア世界)という主張をしている。
これは、
ロシア語を話し、キリスト教正教会を信仰する人々が居住する地域を
「独自の文明圏」と見なすロシアの世界観、思想、イデオロギーである。


・この世界観によると、
ロシア、ウクライナ、ベラルーシは、
同じ民族、同じ宗教を持つ、一つの民族である。
ところが、ウクライナはロシアを裏切って欧州に向かっている。
ウクライナを取り戻さなければならない。


・ドゥーギンは、ウクライナについて非常に強硬で、
「ウクライナ全土を解放しなければならない」
という考えだ。
別の言葉で、「ロシアの物にする」ということだ。


・プーチンは、
ロシアの「緩衝地帯」である「旧ソ連圏」を守るために、
緩衝国家ウクライナを欧米に奪われないために、
この戦争を開始した。


・トランプ政権は、「日本自立」のチャンスなり。


・「他国を守りたくない」というのは、
「アメリカファースト」「お金ファースト」の
ビジネスマン・トランプの「本質的価値観」だと思う。


・アメリカの関与減を、
「日本は、自分の国を自分で守れる体制をつくるチャンスを与えられたのだ」
「軍事の自立を達成するいい機会だ」

肯定的にとらえるべき。


★コメント
膨大なニュースと国際情報が飛び交うなか、
北野さん文章は、本質のなかの本質を突いている。
そのため、世界を俯瞰してみることができ、
複眼的思考力を身につける手助けをしてくれる。
最終的には、自分自身で調べて分析することが
自分の深い理解につながる。
そのための強力な材料と良質な教材を北野さんは提供してくれる。
本書を熟読することで
支配者層や世界を動かすリーダーの思考力をインプットすることが可能となる。