◆石原ヒロアキ『漫画・マンシュタインと機動戦』を読み解く
監修→大木毅。
★要旨
・「ドイツ国防軍最高の頭脳」と称された、
エーリヒ・フォン・マンシュタイン。
・その評価は、長く本人の回想録を基にしたものであったが、
冷戦後は戦争責任の回避や
戦略的視野の欠如が批判されるようになった。
一方で、
その作戦能力の高さを認める声も根強く、
評価はいまも揺れている。
・本書は、
スターリングラードからクルスク、
ドニェプル川の戦いを描きながら、
機甲戦の進化と独ソ戦の実態を再現したものである。
・かつて、マンシュタイン元帥は、
戦争に敗れたドイツ国防軍の将でありながら、
称賛と名声をほしいままにしてきた。
・1940年のアルデンヌ森林地帯を突破、
あるいは、1942年に難攻不落の要塞セヴァストポリを
攻略した軍司令官としてだ。
・また1943年以降、
優勢を誇るソ連軍に一泡もふた泡も食わせた軍司令官として、
さまざまな戦功を上げたことにより、
「ドイツ国防軍最高の頭脳」と称され、
敵であった連合国の専門家たちからも高い評価を受けた。
・しかし、そうしたマンシュタイン像は、
彼自身が回想録『失われた勝利』をはじめとする、
さまざまな手段によって流布させたものだった。
・やがてそのような「虚像」は剥がれていく。
冷戦が終わりのきざしを見せ始め、
数で優るソ連軍を質で破ったドイツ国防軍という「神話」は
必要性を失っていった。
・ただし、このような傾向には、
さずがに行きすぎたところがあって、
2010年代以降、さまざまな欠点はあれど、
優れた作戦家であったと評価するような評伝が
刊行されるなど、いわば揺り返しも来ている。
・本書においては、
さまざまな批判を受けてもなお色褪せぬ、
マンシュタインの作戦の巧妙さが鮮烈に描き出されることとなった。
・2022年以降、
同じ場所で戦闘は3年以上続いている。
・現在、ロシア軍は優勢な兵力を保持しているにもかかわらず、
また、ウクライナの地形や道路事情も当時と
さほど変わっていないにもかかわらず、
なぜ決定的な勝利を掴めないのか。
・軍隊とは、保守的な組織だ。
新しい考えを入れるよりも、
古い考えを捨てるほうが困難といわれている。
・ロシア軍がいまだに
BTG(大隊戦術群)の呪縛から逃れられないのであれば、
この戦争は容易に終わらないだろう。
★コメント
過去の戦史から学べることは多い。
関連文献を読み漁りたい。