◆宮崎伸治『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』を読む
サブタイトル
→【こうして私は職業的な「死」を迎えた】
宮崎さんは、翻訳家。
自らの独自の武器を作るため、50歳から英語以外の語学学習にチャレンジ。
8カ国語の言語を中級レベルまで持っていった。
近著『50歳から8か国語を身につけた翻訳家の独学法』でブレイク。
★要旨
・私はイギリスの大学院に留学しており、
来る日も来る日も読書に明け暮れていた。
・そんなある日、図書館にこもって『7つの習慣』の原書を
一心不乱に読み進めていくと、
経験したことのない強烈な至高体験をすることとなった。
・「翻訳の神」が降りてきたとでも言おうか、
体中の細胞がじんじん興奮してきて、
そのあとも延々と続いた。
そのとき強烈に脳裏に刻まれたのが、
自らの手で訳した『7つの習慣』が書店に大量に平積みされている映像だった。
・あまりにも鮮明で、あまりにも強烈な映像だった。
それから、自分こそが『7つの習慣』の原書を翻訳出版する人間なのだ、
というワクワクドキドキ感に支配され続けた。
・英国留学から帰国して数か月後、
山手線に乗ると、
バカでかい『7つの習慣』の翻訳書の広告が目に入った。
→
(うわ~、やられた~。
私が翻訳するはずだった本が、先に誰かに翻訳されてしまった!
チクショー、やっぱりあの本、すごかったんだ)
・しかし、私は『7つの習慣』には第2弾があることを知っていた。
・その後、生活のため、がむしゃらに書きまくり、
がむしゃらに翻訳しまくっていた。
帰国後、3年間で9冊の著訳書を出すに至った。
・ある日、女性編集者と雑談している最中、
『7つの習慣』の第2弾を訳したいと、本音を漏らした。
彼女は呆れ返ってこう言った。
・「宮崎さん、いくらなんでもそれは無理ですよ。
第一弾があれだけ売れているので、
第1弾の訳者が第二弾も訳すに決まっているじゃないですか。
考え方が甘すぎますよ。
アプローチしても無駄ですよ」
・彼女のその言葉でハッと閃いた。
彼女は「アプローチしても無駄ですよ」
と言った。
しかし彼女の言葉の中の「アプローチ」という単語が引っ掛かったのだ。
・(アプローチ?そうだ、アプローチしてみよう。
なぜ私はこの3年間、自分からアプローチしなかったのだろう。
アプローチしなければ、第二弾の翻訳が回ってくる可能性もない。
ダメ元でアプローチしてみよう。
ダメだったらあきらめられる)
・手紙を書いたが、編集長から電話がかかってきて
『7つの習慣』の第二弾は、訳者が決まっていると
丁重に断られた。
・しかし物事がどうなるか、神のみぞ知ることである。
数か月後、その出版社から第二弾の翻訳依頼が
舞い込んできた。
・出版社は、経営挽回のため第二弾を早く出したかったが、
第一弾の訳者は、翻訳するのに3年かかってしまうので
超特急で訳せる私に3か月で
訳してもらえないか、という相談だった。
・専業の翻訳家がその本に専念しても
7、8か月かかる分量である。
92日間というのは、翻訳界の「ミッション・インポッシブル」なのだ。
・でも私ならできる。
一見不可能としか思えないことでも私ならできる。
なぜなら、すでに原書を何度も読み込んでいる私には
解釈にかかる時間が不要だからだ。
・しかも私の英語の語彙力は、ハンパない。
知らない単語など原書の中でも数えるほどしかない。
・いい訳文やいい訳語が浮かんでこないとき、
その英文や英単語が夢の中に出てきた。
いきおい夢の中でも、
その訳文や訳語を考える羽目になった。
・1日16時間だったのが、
いつの間にか1日24時間の翻訳耐久レースに変わっていた。
・5月31日の夕方、とうとう訳了した。
私は約束をきっちり守ったのだ。
★コメント
人生の動かし方、
プロジェクト達成するための極意が詰まっている。