◆マーチン・ファン・クレフェルト『戦闘力。なぜドイツ陸軍は最強なのか』を読む



★訳者、塚本勝也氏の解説


・ドイツ軍は、
第二次世界大戦で、ポーランドを二週間で降伏させ、返す刀で大国フランスをわずか四二日間で陥落させた。
ドイツはその後もヨーロッパを席巻し、ナポレオン以来最大の版図を手中に収めた。


・また、ドイツの高度な科学力を活かして、優れた戦車や航空機だけでなく、ジェット機や弾道ミサイルなど、画期的な新兵器を生み出したこともその評価を高めるうえで寄与したことは間違いない。


・ドイツはその地理的位置から常に東西の二正面作戦を強いられており、
また国力という点でもその周辺国に対して圧倒的な有利に立っていたわけではなかった。


・それゆえ、物量面では常に不利な立場に置かれ、
それが苦境を打開する新たな戦術や兵器の開発を促したことは疑いない。


・ドイツ兵の個人的、あるいは集団的な特性がその強さに何らかの影響を与えたのではないだろうか。


・そうした問いに正面から取り組み、
ドイツ軍における主要な軍種であったドイツ陸軍における士官や下士官の採用、
教育、訓練、昇任、賞罰といった人間的な要素に着目したのが本書である。


・著者マーチン・ファン・クレフェルト教授は、
世界的に有名な戦略研究者であり、とりわけ軍事史の権威である。
クレフェルトは一九四四年にオランダで生まれ、
一九五〇年以降はイスラエルに居住している。


・博覧強記のクレフェルトの代表作の一つである本書は一九八二年に刊行され、
一九七八年に出版された『補給戦』に次ぐ古典に属する。
しかし、「戦闘力」とクレフェルトが呼ぶ、軍事力の人的要素に着目し、
その構成要素を実証的に分析した本書はいまだに色あせていないと考えられる。


・本書は古典とはいえ、ドイツ陸軍総体としての戦闘力を論じている点で、
その価値はいささかも低下していないと思われる。


・本書で着目する戦闘力の根源は、部隊を同郷の人間で固めたり、
指揮官や戦友との仲間意識を醸成したりするというものであった。


・偉大な戦略家であるカール・フォン・クラウゼヴィッツが指摘するように「戦争はカメレオン」であり、
技術を含めて常に変化するが、戦闘力の前提となるものは人間の本質に根差しており、
時代が変わっても変化しないとクレフェルトは主張する。


・ 戦争は他の手段を組み合わせた政治の継続であるが、
戦闘力は政治に部分的にしか依拠していない。


・ どのような政治体制であれ、軍隊は市民社会からの支持と尊敬を受けていることが重要である。
とりわけ現代でも事実上戦闘職種の大半を占める男性兵士が女性から支持され、
尊敬されていることが不可欠である。


★コメント
今こそ、こういう骨太の本を読むことで、
日本の防衛のレベルアップにつながる。