◆山根節『なぜあの経営者はすごいのか:数字で読み解くトップの手腕』を読む
★要旨
・経営教育は、好きな経営者のベンチマークからするべし。
・プロ経営者とは、理論的素養と深い経験値、
そして高い志をもち、トップとしての役割を明確に認識し、
それを高い水準でこなすトップのことだ。
・多くの人に誤解があると思うが、
ビジネススクールは無味乾燥な経営理論だけを教えているわけではない。
経営は人間臭いものである。
・授業の討議教材として、経営者の評伝の本を使うことがある。
また経営誌や経済紙の記事を使うこともある。
・見本市の運営会社も業界誌の会社も、
いわばベンチャーに関するインサイダー情報の宝庫である。
・シナリオを描いた孫正義は、
見本市と業界誌の会社こそ、
まさに当時の情報革命のインフラと見たのだ。
・孫さんが構想する壮大な理念や方法論は
一見すると乱暴に見えるが、
実はリアルで緻密でクリエイティブである。
・孫さんは、幼少体験と猛勉強で経営の素養を身に着けた。
子供の頃から実家のビジネスを手伝い、
また経営書の類をむさぼるように読んだ。
・会計は経営を読み解く必須スキル。
会計は、経営の全体像を「写像化」するツールである。
経営活動全体に貨幣価値という尺度を当てたものが、
財務諸表、ないし会計情報である。
・日本電産の永守重信は、若い頃から財務を猛勉強した。
決算説明会では、アナリストたちの質問に対して
永守が自ら説明に立つ。
その説明は「立て板に水」といわれ、有名である。
それどころか、緩い質問が出ると永守から反撃され、
アナリストたちからやり込められることもある。
それほど財務数値に明るく、
どんな時でも永守の口から即座に数字が出てくる。
・永守はもともとエンジニア出身だが、
若い頃から財務を猛烈に勉強した。
・永守はもともと口下手だったが、
それでは社長にはなれないと思い、
中高時代には弁論部に入って口上を磨いた。
・技術の連中が音をあげそうになると、
永守はいつも言った。
「大声で『できる』と百回言ってみい」
「できる、できる、できる・・・」
日本電産の工場では夜になると、
こんな念仏のような合唱が聞こえてきたという。
「どや、できる気になったやろ。できると思えばできるんや」
・岡藤正広は、友人の持ってきた小さな新聞記事を見た。
そこにはこう書いてあった。
「大成した人は若い頃、大病をわずらったか、親を亡くしている」
・「経営者は知れば知るほど口を出したくなるものだが、
知れば知るほど黙るのが、より良い姿だ」
(ダイキン工業会長、井上礼之)
・経営のプロたちはものすごく勉強している。
永守重信は「かまぼこ」とあだ名されるくらい猛勉し、
財務の本まで書いた人である。
新浪剛史は落選にめげず、3度目にして半ば強引に
ハーバードMBAをゲットした。
★コメント
経営者の手腕は、数字に表れることは確かだ。
人間の機微と数字をつくる手腕は、
経営者にとって必要不可欠である。