◆大西康之『最後の海賊。楽天・三木谷浩史』を読み解く



正式タイトル

→『最後の海賊。楽天・三木谷浩史は、なぜ嫌われるのか』



★要旨



・2023年4月、

東京・品川区の桐ケ谷斎場でひとりの男の通夜が執り行われた。


「國重惇史」


彼の77年の生涯を書けば、

それだけで一冊の本になる。



・1968年、東大を卒業後、住友銀行に入行。

MOF担(大蔵省担当)、本店営業第一部長など

エリートコースを歩んだ。



・國重は、仕事はできるが

女癖がめっぽう悪く、

住銀で頭取、会長を歴任した磯田一郎の女性秘書と

不倫関係になる。

それが磯田の逆鱗に触れ、

住銀子会社の証券会社に飛ばされた。



・國重は、住銀頭取だった西川善文を

三木谷に引き合わせ、

楽天にこの証券会社を買収させる。

これが楽天証券の始まりである。



・國重は、

会社と一緒に自分も楽天に買わせ、

三木谷の参謀に収まった。

2003年のことである。



・六本木ヒルズ森タワーにオフィスを移転し、

「ヒルズ族」の筆頭格として

世間を騒がせていた楽天には、

「大人」が必要だった。

堀江貴文や村上世彰ら、ヒルズ族の「筆頭格」が

楽天の三木谷だった。



・元気で無軌道な経営者に必要だったのは、

ドンペリや美女たちではなく、

経営の指南役となる「大人」だった。



・若い海賊たちの明暗を分けたのは、

「手練れの軍師」と出会えたか、

出会えなかったか、

だったのだ。



・2004年から2005年にかけての

楽天による、あおぞらカード買収、

プロ野球参入の表明、

東京放送の株の買い占めなど、

連日、三木谷の顔がテレビで大写しになる。

この頃、

三木谷の隣には、必ず軍師・國重の姿があった。



・フィンテックへの進出、

プロ野球参入、

TBS買収など

ベンチャーの楽天にとって、そのうちのひとつだけでも

手一杯のはずの大仕事を同時並行でこなせたのは、

住銀時代に政官財と深いコネクションをもつ國重が、

水面下で激しく動いたからだ。



・既得権を握る人々の分厚い壁を

突き破っていくためには、

酸いも甘いも知り尽くした「大人」が欠かせない。

それが國重だった。



・目立つことが何より好きな國重にとっても

世の中を騒がせ続ける楽天は「楽園」だった。

一流バンカーは、

これまでに培った人脈と経営ノウハウを

縦横無尽に駆使して、

水を得た魚の如く働いた。



・國重の仕事ぶりは、

まさしくプロフェッショナルの名に値するものだった。

その一方で私人としての生活は、破綻していた。

2014年、

國重は「一身上の都合」で楽天を去る。



・楽天に籍を置いていた頃の國重は、

20歳年下の若き起業家を持てる力の全部で支えた。

三木谷の決断力と行動力に惚れていた。

その恩を三木谷は忘れない。



・國重の通夜に三木谷の姿があった。

「触らぬ神に祟りなし」

とばかりに不義理を決め込むのが日本人の常だが、

恩人に花の一つも手向けられないようでは、

「海賊稼業」は務まらない。



★コメント

三木谷さんの周りは、どのような感じなのか、

いろいろ知れて面白い。