◆畑中章宏『今を生きる思想。宮本常一。歴史は庶民がつくる』を読む
副題→「歴史は庶民がつくる」
★要旨
・『忘れられた日本人』に収録された「対馬にて」の
「寄りあい」は、
1950年に八学会連合の対馬調査に民族学班として
参加した宮本が仁田村伊奈で体験した寄り合いの話である。
・この紀行文は、
日本の共同体が継承してきた熟議による民主主義、
満場一致の民主主義の一例として取り上げられることが多い。
・寄り合いでは板間に20人ほど、
その外にも多くの人が詰め、
区有文書の貸し出しや、さまざまな議題について、
朝からずっと協議していた。
・みんなが納得のいくまで話し合い、
結論が出ると守らなければならない。
「理窟をいうのではない。
一つの事柄について自分の知っているかぎりの
関係ある事例をあげていくのである」
・村の伝承に支えられながら村の自治が成り立っていた。
すべての人が体験や見聞を語り、
発言する機会をもつことは、
村里生活を秩序だて、
結束を固くするのには役立った。
・伝承が急速に消えつつある時代に、
宮本のフィールドワークはどのようなものであったのだろう。
・フィールドワークを可能にするには、
まずできるだけ「よい老人」に会ってみることが大切であるという。
・そういう人たちは祖先から受けついできた知識に私見を加えない。
・なぜならその知識を「公」のものと考えているからである。
・幕末生まれの老人と明治時代に生まれた人とのあいだには、
民間伝承の保有量において明らかに差があった。
・話す態度が端然としていること、
私見を加えないこと、そのうえもっている知識を後世に伝えたいとする情熱など、
話を聞いていて胸を打たれることが多かったという。
★コメント
いろいろ考えさせられることが多い。