◆福永耕太郎『電通マンぼろぼろ日記』を読む



★要旨



・私は電通マンとして、

これまで数えきれないくらい土下座してきた。

もはや土下座になんの抵抗もない。 



・新人時代、営業部の先輩とともに、

ある有名女性歌手のCM撮影に立ち会っていたときのことだ。

撮影中、女性歌手が突然、大声をあげた。



・不機嫌を隠そうともしない怒鳴り声に周囲は凍り付く。すると、先輩はすかさずクライアントの担当者の前にスライディングし、

「申し訳ありません!」と土下座したのだ。



・しかもその姿が、女性歌手の視界にしっかりと入り込むように計算して。



・新人の私は、まず何が問題なのかを把握し、

解決策を講じるべきだろうと思ったのだが、

ベテラン電通マンの思考回路はそんなところに迷い込まない。



・続けざまに、

先輩は控え室へと引き上げていこうとする女性歌手の前に飛び出すと、

その靴先5センチのところに深々と土下座した。 



・女性歌手はやれやれといったふうに

苦笑いをしていったん控え室に帰ったが、

数分後にスタジオに戻ってきた。

無事、撮影が再開された。



・「福永、よく覚えておけ。土下座ほど効率のいい手法はないぞ」 



・私には、やすやすと土下座する先輩が格好よく見えた。

こうして誰しもが電通マンとしての土下座を会得するのである。

広告代理店の社員にとって、

「クライアントは神さま」なのだから。



・コネ入社のトライアングルは、

電通、クライアント企業、マスコミの3者の三角形で成り立っている。

このうち、一番強いコネは何か。



・最強のコネは、マスコミである。

広告代理店とマスコミ各社は、

お互いに取引する広告を介した依存関係にある。



・実際に、電通社内には、

地方新聞や地方テレビ局の役員の子息がひしめき合っているし、

マスメディア側にも電通幹部の子息が多く入社していく。 



・電通とマスコミ各社は互いに相手の有力者の子息を囲うことで結束を高める。

まるで戦国時代の政略結婚のようでもある。



★コメント

あらためて、企業戦士の凄みを感じた。

見習いたい。