◆佐々淳行『ザ・ハイジャック。日本赤軍とのわが7年戦争』を読む



★要旨



・アメリカの社会史に、

「ロアリング・トゥエンティーズ」(吼える1920年代)

という言葉がでてくる。

禁酒法の時代、全米で暗黒街のマフィアが暴れまわり、

とくにシカゴは、

凶暴なアルカポネが君臨し、

市民を恐怖のどん底に陥れた。



・1970年代の

「ロアリング・セブンティーズ」を彩る国際犯罪は、

日本赤軍が次々と敢行した「ハイジャック」だった。

私は、この時代の

「よど号事件」に始まるハイジャックを、

「ダッカ事件」以外、すべてを担当した。



・半世紀に及ぶ危機管理人生において、

私は「東大安田講堂事件」や「あさま山荘事件」

「ひめゆりの塔事件」などで「警備屋」として知られているが、

じつは「外事警察」の情報・捜査官の経歴が一番長い。



・かつて、作家・麻生幾の原作にもとづく、

NHKドラマ「外事警察」が放映された。



・「よど号事件」(1970)から

「ダッカ事件」(1977)までの7年間に、

テルアビブ事件も空港が舞台であり、

シンガポール・シー・ジャック事件も

最後の舞台が空港であったことを考えて勘定にいれると、

7件の日本赤軍ハイジャック事件が起きている。



・これらの国際テロと戦い続けたのが、

日本警察の「外事警察」だったのだ。



・そもそも、「外事警察」の本来の任務は、

「スパイ取締り」である。



・この本を読み終えた読者は、きっとこう呟くだろう。

「これで日本は、本当に『国家』などだろうか」と。



・プロローグで、

私は「全共闘」の「団塊の世代」に、

狂乱の70年代の革命家たちに、

「総括」と「自己批判」を求めた。



・しかし、いま書き終わってみると、

全共闘世代にそれを求めるのは

無理などだと寂しく思う。



・なぜならば、破邪の裁き、

正義の実現を果たすべき「国家」を司る自民党政権が、

自ら法的制裁を放棄し、

獄中の犯人たちを超法規釈放し、

法治国家の為政者として許されない責任の回避、

問題解決の先送りを、やってきたからだ。



・クララルンプール事件とダッカ事件では、

時の総理、三木武夫と福田赳夫は、

「人命は地球より重い」との迷言で

獄中の凶悪犯合計11名を、超法規釈放して、

とくにダッカ事件ではテロリストたちを

600万ドルの身代金を添えて世界に放って、

ごうごうたる国際世論の非難を浴びた。



・読者の読後感は、

きっと日本政府の腰抜けぶりに対する激しい不信感と、

もってゆき場のないやり切れなさの念を覚えることだろう。



・いまは治安は回復され、

見通し得るかぎりの将来に

国内でロアリング暴力革命が起こる兆しはない。

しかし、10年後、20年後、

「狂瀾怒涛」の時代が再来しないという保証はない。



★コメント

近現代史から学べることは多い。