◆中村淳彦『東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか』を読み解く



★要旨



・AV女優や風俗嬢の取材、それと介護現場のことだった。

そこで、担当編集者から言われた。 



 「中村さんは貧困問題をずっとやっているわけですね」  



・そのときの会話で初めて、自分事として「貧困問題」という言葉を聞いた。  



・当時、取材対象者の状況や言葉、日常に接する人たちの変化や異変に疑問を抱くことはあったが、それが貧困問題とは思っていなかった。



・彼女たちの物語は平穏で幸せとは言い難かったが、貧困という社会問題より、痛快なピカレスクロマンだったのだ。  



・裸の世界はそれぞれの事情を抱えた女性たちが「最終的に堕ちる場所」という社会的な評価で、特殊な産業だ。



・しかし、覚悟を決めて堕ちてしまえば、貧困回避どころか中間層を超えて富裕側にまわれるという世界だったのだ。



・編集者に指摘されるまでまったく自覚はなかったが、

ずっとやってきた裸の女性たちの取材は、結果として「貧困」という社会問題のフィールドワークでもあった、ということなのだ。



・結局、私は自分の価値観を持ち込まない、徹底して傍観者であるべき、

取材以上の人間関係は培わない、

そしてケガしないギリギリのラインまで書いて伝える、という答えを出した。



・支援者ではなく、

彼女たちが直面している現実を可視化するための取材者だ。その意識は現在も徹底している。  



・それから取材現場では情報をつかむために必要な最低限の質問以外、

ほとんど自分からはしゃべらない。

ただただ聞くだけに徹している。



・どんな話が返ってきても否定はしない。

女性たちは、なぜか否定をしない相手にはしゃべる。



★コメント

中村氏の取材力には圧倒される。

知らない世界をわかりやす、解き明かしてくれる。

さまざまな社会問題を学ぶことができる。