◆高野秀行『語学の天才まで1億光年』を読む(その2)



高野氏は、辺境冒険作家。



★要旨



・学生時代から現在に至るまで

25を超える言語を習い、実際に現地に使ってきた。



・言語を学ぶと、それを話している人たちの

世界観もこちらの体にも染み込んでくる。

それが面白くてしかたがない。



・今でもよく憶えているが、

東京・八王子にある実家に帰る途中、

京王線の車内でやせた金髪の西洋人女性と隣り合わせた。

1986年のことで、

当時外国人はひじょうに珍しかった。



・私は緊張していたが、

彼女が読んでいるのがフランス語の本であることに

気づくと思わず、

「フランス人ですか?」

とフランス語で訊いてしまった。



・内気な私にしては、

ものすごく珍しいことだ。

インド旅行から帰って間もない頃で、

見知らぬ外国人と話す習慣が残っていた、

といいこともあっただろう。

また、なんとしてもコンゴに行きたかった、

ということもある。



・彼女は「ウィ(そうです)」

と返事をしてくれた。

それ以外は全く理解できなかったので、

あとは英語で話した。



・その場で私はその金髪女性に、

フランス語の個人レッスンをしてほしい、

と頼んだ。

シルヴィは、快諾してくれた。



・二重録音学習法。



・彼女は、フランス語を教えた経験がなく、

また、とにかくやる気がなかった。

すぐ授業に飽きて、

日本の生活の愚痴とか、昔の旅の話だとかの

話を始める。



・これではいけない。

カネと時間を浪費しているだけだと思った私は、

画期的な解決策を思いついた。

授業を丸ごとテープレコーダーで

録音することにしたのだ。



・60分を録音し、

家に帰ってから彼女のお喋りを全部文字起こしした。

わからないところは、

辞書や文法書で類推する。

そして次のレッスンでチェックしてもらう。



・このテープ起こし学習法は、

びっくりするほど効果的だった。

何よりよかったのは、

「フランス人の話す本当のフランス語」

が学べるところだ。



・テープ起こしは、その後さらに進化した。

2台目のレコーダーを用意して、

「前回のテープ起こしをチェックしているシルヴィ先生の喋り」

を録音した。



・二重録音が含まれるシュールな学習法だったが、

これも役立った。



・人生において「魔法」を獲得した初めての体験であり、

言語という魔法を獲得することが

どれほど面白いか、

初めて実感したときでもあった。



・どの言語もみんな美しい。

ここ十数年、私はいつも個人レッスンで

ネイティブの先生に例文を習い、

それを録音し、あとで反復練習をするようにしている。



・どの言語であっても、

先生が例文を読み上げるのを録音するとき、

その美しさについ聞き惚れてしまう。

先生役の人たちはみんな素人教師であり、

アナウンサーでもなければ

読誦のトレーニングを積んだ人でもない。

別に声がいいとかでもない。



・誰がどういうふうに読んでも、

ネイティブが話す言葉は、みんな美しいのである。



・それぞれの言語には独自のリズムとテンポがあり、

強弱と抑揚をなだらかに繰り返す。

そして、何よりそれらすべてに意味があり、

細部に意図が隠されている。



・言語の美しさというのは、

完成された体系がもつ、調和の美しさなのである。



★コメント

あらためて、語学の魅力に気づかされた。

居酒屋で外国人と歓談できるレベルの

語学力を磨きたい。





◆まぐまぐメルマガ『国際インテリジェンス機密ファイル』ご案内。

ご登録はこちら。


http://www.mag2.com/m/0000258752.html