◆伊藤彰彦『最後の角川春樹』を読む
★要旨
・基盤となる会社を失い、がんに見舞われ、
獄に入るなど通常の人間なら絶望し、
そこで人生が終わってもおかしくない、
幾多の困難に直面しながら、
角川春樹はけっして屈せず、そのつど立ち上がった。
・私は、その人としての力が
どのように育まれたのかを知りたかった。
・私には、角川春樹という人物は
映画の側からだけでは、到底解き明かせない、
出版と映画と俳諧と民俗学の
交錯する「巨大なカオス」であると思えた。
・角川の人生の真骨頂は、
出獄後の再起にある、と私は考えた。
・角川の愛読書は、
岡本天明の『日月神示』なり。
→
「大きな生命に通じるものには死はないぞ。
通じなければ死はあるぞ」
・あるユダヤ人のプロデューサーが言った。
「アメリカに楯突いた日本人は2人いる。
田中角栄と角川春樹だ」
彼はそのあと、こう苦々しく付け加えた。
「角栄は死んだが、角川春樹は、
映画『男たちの大和』とともに復活した」
・角川春樹は、朝3時半に起床し、
地元の神社、上目黒氷川神社に行って、
神前の水を取り替える。
→
いつも通り6時に九段下の
角川春樹事務所に出社し、
神仏に祈ったあと、本やゲラに目を通す。
・1年に350冊の書籍を読み、
手帳にABCのランク付けして
これはと思った作家には、すぐさま会いに行く。
その席で、作家がこれまで書かなかった分野の企画を
提案するのが編集者の仕事だと語る。
・角川は、学生時代、
栗田書店の返品の山に囲まれた倉庫のなかで
『巨富を築く13の条件』という本を
たまたま読んだ。
・今から思えば、
「かならず成功すると潜在意識に刷り込めば、
実現しない目標はない」
と説く他愛のない本なのだが、
22歳の角川は感銘を受ける。
→
その日から、自分のベットのところに、
「角川は史上最大の出版業者になってみせる」
という言葉を書いて貼り、
それを毎日大きな声で読み上げていた。
・信念を潜在意識に叩き込み、
想念のエネルギーにする、
角川の思考・行動様式の原点は、
「巨富を築く13の条件」だった。
→
この本を読んでからは、夜の商売も止めて、
いろんな人に会い、やみくもに本を読み、
猛烈に勉強するようになった。
・横溝正史作品のなかで、最初の映画製作に
『犬神家の一族』を選んだ。
「犬神」という語感に惹かれたから。
タイトルも絵的にも良いと思った。
・1995年、角川は出所後、あらたな出版社
「角川春樹事務所」を設立した。
出版人として、ゼロから再出発した。
→
顧問には、辻井喬、紀伊国屋書店社長・松原治、
森村誠一、弁護士の河上和雄、
飛鳥新社社長の土井尚道など
そうそうたるメンバーが名を連ねた。
★コメント
すさまじい人生に学ぶことは多い。
真似すると火傷しそうだが、魅力的な生き方だ。