◆立川談春『赤めだか』を読み解く



★要旨



・中学時代、

誰も目もくれなかった落語全集を

図書室で読んでみたら、これが面白い。



・中学卒業間近、

上野領本へ落語を聞きにいった。

立川談志の評判は、決して良くなかったが、

僕は魅せられた。



・高校に入ってから、談志の追っかけを始める。



・談志の危なくて、激しい漫談を数多く聴くうちに

なんでこの人は世の中から叩かれないのか、

不思議に思った。



・昭和59年3月、

なごり雪の降る日に、

僕は、立川談志の弟子になった。



・談志は言った。


「よく、芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。

盗む方にもキャリアが必要なんだ。

最初は、俺が教えた通り覚えればいい。

盗めるようになりゃ一人前だ。

時間がかかるんだ」



「いいか、落語を語るのに必要なのは、

リズムとメロディだ。それが基本だ」



「怒鳴ってもメロディが崩れないように

話せれば立派なもんだ。

そうなるまで稽古をしろ。

俺がしゃべった通りに、そっくりそのまま覚えてこい。

物真似でかまわん。

それができる奴をとりあえず、

芸の質が良いと云うんだ」



・現在の自分が振り返って、

感じる立川談志の凄さは、次の一点に尽きる。


「相手の進歩に合わせながら教える」



・青天の霹靂。築地魚河岸修業。



・ある日、突然、談志がいった。


「おまえら、礼儀作法から気働きを含め、

何から何までダメだ。

文字助が一から仕込むと云っているから、

魚河岸へ行け。

みっちり働いて修業してこい」



・はじめての築地修業は、シュウマイ屋だった。

ここのおカミさんの凄いのは、

物事の説明を一切しない点だ。

場内だの、薬屋だの、とにかく行ってこいの一点張りだ。

仕方ないから他人に尋ねる。

そこでコミュニケーションができる。

コミュニケーションをとるための礼儀も必要だし、

自然と訓練になる。



・修業とは矛盾に耐えることだ、

と談志に云われたことが蘇った。



・この修業をやり抜くしかないんだと

覚悟を決めた。



・あとから、

立川志らくという弟子が入ってきた。

しかし、築地の修業は嫌です、

と断ったらしい。



・しくじった時は、

とにかく時間を置かずに謝れというのが

この世界(落語界)の鉄則で、

その対処の仕方で、

執行猶予がつくか、実刑になるかが決まる。

夜中だろうが関係ない。



・談志の教えは、

いつ何処でどんな根多(ネタ)が

自分の人生にシンクロしてくるか、わからんのだから、

ネタだけは、たくさん覚えておけ、

というものなのだ。



・談志は云った。


「唄や踊りが嫌いだという奴に、

伝統芸能をやる資格はないと俺は思っている」



・柳家小さん師匠から稽古をつけてもらった。

驚いたことに、

稽古の仕方、進め方が談志とそっくりだったのである。



・小さんが談志に教えたものを、

同じ教え方でオレは教わってたんだ。



・談春の芸には間違いなく、

柳家小さんの血が流れていたんだ。



★コメント

さすが、語り口がおもしろ過ぎる。

彼の落語も聞いてみたい。