◆河東哲夫『日本がウクライナになる日』を読む



★要旨



・ロシア軍の通信体制は、弱い。



・日本にとっての満州は、プーチンにとっての東ウクライナなり。



・プーチンは狂っていないが、住む時代が違っているのである。



・バイデンは、「東ウクライナ=緩衝地域」の腹だった。



・2014年、ロシアが武力でウクライナから

クリミア半島を奪ったことへの制裁として、

西側諸国が先端技術をロシアには出さないようにしたことが、

通信問題にも響いた。



・必要な半導体、つまりマイクロチップを自分で作れず、

輸入もできないので、

ロシアはいまや宇宙を使ったGPSの体制も維持できなくなっている。

それに昔から、ロシアは軍事予算が横領されることで有名だ。



・戦争は、情報収集、評価、シュミレーション、

補給「ロジ」能力が命である。



・ナマの戦争は、まず敵の地理、地形、交通路など

十分調べておかないと攻め込んでから立ち往生してしまう。

そして敵の持っている武器、兵員、士気なども調べておかないと、

悪くするとこちらが全滅する。

よくいう、情報収集とその分析、インテリジェンスが絶対に必要なり。



・プーチンは、KGB出身。

警察や軍隊は秘密体質が強い。

敵に情報がもれると捜査や作戦に差し支えるから、

部下に何のために何をするのか全容を言わない。

ただ細かい具体的な任務ばかりを言いつけて、

情報は自分が一手に独占する。



・今回のウクライナ作戦がそうだった。

大臣たちも、そのほとんどはこれを事前に知らなかったし、

軍や情報機関の中堅幹部でも、これを知らなかった。



・今回、ロシアの情報機関は、

ロシアのエリート層のいい加減な国際情勢認識に

合わせたようなレポートを、

上に上げ続けていたと思われる。



・補給。

おおげさなことを言えば、戦争は補給で決まる。

兵隊は飲み食いしなければ動けない。

弾薬がなければ戦闘ができない。



・守るほうも、食糧が切れたら降参するしかない。

これをすべて担っているのは、補給・ロジスティクだ。

補給とは、現場の状況を考えて、

必要なものを必要なときに届ける想像力、

思いやりの問題でもある。



・「植民地」が必要なロシアの経済力。



・キエフは1240年、モンゴルに制圧される。

モンゴル統治をのがれたノヴゴロドも、

1478年にはモスクワ大公国に併合され、

のちに、イワン雷帝によって市民を虐殺され、

その自由を奪われる。



・一方でモスクワはモンゴル来襲以後、

モンゴル人支配者のための税金集めを請け負い、

これを着服することで急に伸びた新興勢力だ。

やがてモンゴル勢力を駆逐すると、

ウラル山脈を越えて制服を開始。

300年かけて今のロシアのもとを作った。



・いまでも記憶に新しいのは「ガス戦争」だ。

ガスの通過料引き上げなどで、何度ももめて、てんやわんやだった。

最後にはウクライナのチモシェンコ首相が

プーチンと直談判してガス価格の値下げを勝ち取ったりしていた。

この美人のチモシェンコ首相がモスクワにやってくるたび、

プーチンは苦笑い。

でも満更でもない顔で彼女のいうことを受けていた。



・いままでは、ウクライナ・ロシア関係というのは、

表面では殴り合っていても、

テーブルの下では手を握ることが多かった。



・ロシアが魅力ある経済社会を築いていれば、

ウクライナのほうからロシアに寄ってきていただろう。

しかし、それは無理だった。



・ロシアは、天然資源に依存する異形の経済である。



・ただ資源だけでは1億4000万人の国民を

食わせるだけの富は生まれない。

資源輸出の利権は少数の特権者に集中しやすく、

途方もない格差を社会に生み出すもとになる。



・制裁がたとえ緩和されたとしても、

資源以外の産業が発達しないと、

民主主義の基盤となる中産階級が生まれない。



・いまのロシアの中流は、

そのほとんどが中央・地方の公務員、

国営・公営の社員、学校教員などで、

政府予算に依存して生きている。

ときには政府を批判する、健全な中産階級ではないのだ。



・ロシアの製造業には、

「サプライチェーンの不備」という問題もある。



★コメント

やはり世界を大きな目で見ていきたい。

大戦略の視点で見ることが大事。