◆渡邊毅『日本と世界の架け橋になった30の秘話』を読む
副題→「戦争と平和」を考えるヒント。
★要旨
・『源氏物語』はなぜ欧米で評価されたのか。
11年かけ英訳したイギリス人の熱意。
・『源氏物語』はいかにして、時を超え、国境を越え読み継がれる文学作品になっていったのか。
11年の歳月をかけて『源氏物語』を英訳し、眠れる紫式部を目覚めさせた王子さまは、一人のイギリスの博物館員だった。
・大英博物館の館員、アーサー・ウェイリーがいつも通り日本画の整理をしていると、
一幅の絵巻物が目に入った。
「源氏物語絵巻」だった。
・「美しい」
とウェイリーは、ものの哀れを背景にして浮かびあがる、美の世界に魅せられていた。
・ウェイリーは少年の頃から古典に親しみ、
古代アイルランド語の碑文の読解に熱中するなど、
異なった言語に興味をもつような子供だった。
・もとより彼は言語の才能に恵まれていた。
・一旦『源氏物語』を原文で読み始めたら、紫式部の天才性に魅了され、
夢中になって惹きこまれてしまった。
そして、ウェイリーはその高い文学性に大きな確信を持ったのである。
〈これはまさに東洋最高の、そしてヨーロッパの小説と比較しても、
世界名作10点の中にその位置を占める長編小説だ〉
・『源氏物語』は世界屈指の名作だ、
と確信し自分がその翻訳者として運命づけられたと予感し、
この作品の翻訳を決意するのである。
・以後11年を費やす翻訳は、
それはすさまじい集中力で進められていった。
・心の中の式部が語りかけたように
「自分が続けるしかない」と思い直し、
〈必ずや世界十大傑作にかぞえられるに相違ない作品を訳しているのだ〉
という信念を繰り返し自分にいい聞かせて、
精魂を込めてペンを走らせていくのだった。
・1000年の夢を破り、
世界に登場した『ザ・テイル・オヴ・ゲンジ』。
・第一巻が出たのは、翌1925年。
装丁は濃紺の布表紙に金文字で『源氏物語』、
背文字には同じく金文字で『ザ・テイル・オヴ・ゲンジ』というタイトルが入っている。
日本古典文学が世界に進出した歴史的快挙である。
・忽然と東方から登場した紫式部の文才は、欧米の文壇で衝撃をもって迎え入れられ、
各新聞・雑誌上のおびただしい書評で激賞と喝采を浴びる。
・彼の文体は美しく、原文に新しい光を浴びせて、
一つの創作的な英文学作品につくり上げているのも、
読者を魅了する力になっているのである。
・ウェイリー訳は今も色あせることなく、
英文学の古典としての地位を占めている。まさに不朽の名作といえるだろう。
・ウェイリーに発見されるまで、『源氏物語』を知る人は欧米で皆無であった。
・1000年眠り続けたその目を覚まさせ、『源氏物語』の真価を蘇らせ、
世界第一級の文学として全世界に知らしめたのが、
ウェイリーという「王子さま」だったのである。
★コメント
今一度、源氏物語をしっかり読みたくなった。