◆田崎史郎『梶山静六。死に顔に笑みをたたえて』を読む



★要旨



・入院して手術後、

梶山静六が日々の思いをつづった大学ノートが残っている。

ノートには、こんな言葉が書かれていた。


「経済をもって興り、経済をもって衰退」


「国家観、人生観、武士道」



・梶山の人生を振り返るとき、

ほんとうに惚れ込んだ政治家は、

田中角栄ひとりである。



・梶山は、

「政治は道楽」

「政治こそ天職だ。生まれ変わっても政治家になる」

といって、

寝ても覚めても、政治に没頭した。



・「田中支配」を内側から突き崩した、

創政会結成につながる極秘会合が開かれ、

この国の政治を変える舞台となったのは、

東京・築地の料亭だった。



・金丸信は、無頓着に見えながら、

金品や政治に関する会話をじつに事細かに覚えていた。


「修身の教科書を丸暗記した」

という金丸の記憶力は、

元来、並はずれて良かった。



・権力の象徴は、大臣である。

それに梶山が就任したときは、61歳だった。



・国対委員長は、政治のプロとして

ある種の資質がないと務まらない。

梶山は、国対委員長就任を受諾した。



・権謀術数の極致。

「自社さ」の人間ドラマあり。



・梶山静六の人生は、じつに起伏に富み、

山あり谷あり、その山は高く、谷は深かった。



・橋本内閣の官房長官として

復活するまでの約2年半は、

梶山の谷底の時期に当たる。



・派閥の求心力が衰え、

派閥単位で総裁選を占うことの誤りに、

もっとも早く気が付いたのが梶山だった。



・梶山は、B4判の模造紙に

鉛筆で書いた政界の図面を作っている。

この一枚紙には、

各党、各派閥の人脈図が描かれている。


これと思った人物の名前を書き加え、

以前と変わっていれば、

消しゴムで消して新しい線を引く。


まるで図上演習をしているかのように、

図面を眺めおろし、

作戦の想を練った。



・政治家の会談が行われる料亭の場所は、

永田町、赤坂、築地、向島、神楽坂と、

相場が決まっている。

だが、小沢一郎は、都心からやや離れた、

東京・大塚の料亭「富王」を好み、

梶山や公明党幹部との密会に、よく使った。



・竹下登から私が教えられたこと、

それは、政治の動きを把握するには

まず日程を調べるということだ。



・政治史には、

衆院解散としか記されていない事象でも、

多くの人間ドラマが潜んでいる。



・歴史を作るのは、あくまで人間であり、

そこに知略や葛藤、非情な打算が息づいているがゆえに、

興味が尽きないのである。



★コメント

田崎さんのディープな取材力は、

多くの学びあり。