◆岩田明子『安倍晋三・秘録』を読み解く
★要旨
・NHKの政治部記者だった私が、
安倍の担当になったのは、2002年、
小泉政権の官房副長官時代からである。
以来、20年にわたり取材を続けている。
・ここ数年、コロナ禍では、
電話でのやりとりが日課と化していた。
取材のために電話をかけるときもあれば、
安倍が、情報収集や雑談するために
かけてくることもある。
・時間帯は決まって、
午後10時半から深夜零時の間だった。
・2002年の最初の頃、
当時の安倍は対峙しても
こちらを一瞥するだけで多くを語らず。
掴みどころのない政治家という印象だった。
・取材先から核心情報を入手できるようになることを、
業界用語で「刺さる」と表現するが、
当時の私には、
安倍に「刺さる」ことは到底難しく、
取りつく島のない状況だった。
・ただ、坂井議員への捜査の読み筋などで
知見を得ていたことに
安倍は興味を示し始めた。
・結局、20年にわたり
取材を続けることになるわけだが、
膨大な回数の重ねてきた。
・安倍は、一度懐に飛び込むと
気さくな素顔を見せる。
・2021年3月17日の夜のことだ。
安倍は富ヶ谷の自宅に、麻生太郎を招き、
2人で酒を酌み交わしていた。
・政治観を微妙に異にしながらも、
長年の盟友である麻生とは、
肝胆相照らす仲だ。
・実はその晩、2人は、
「台湾海峡の有事は、5年以内に起こるのではないか」
と話している。
・台湾有事が起きた場合、
全世界の首脳と交渉し、
陣頭指揮を執ることができるのは、自分しかいない。
そんな自負が安倍にはあった。
・安倍が、総理時代に採った外交戦略が、
「地球儀俯瞰外交」であり、
具体的な手法が「テタテの最大活用」だった。
これが、
安倍外交の真骨頂だと私は見ている。
・テタテとは、フランス語で
「頭と頭をつきあわせる」
「内緒の話」
などの意味で、
外交の場面では、通訳のみを介した、
首脳2人だけの一対一会談をしめす。
・真の外交とは、
首脳自身が相手国の感触を掴むことから始まる。
安倍はそう強く意識していた。
・2019年の御代替りを無事に終えて、
上皇は周囲に、
「安倍総理にしかできないことだった」
と漏らされており、
安倍に信頼と感謝の念を抱かれていたことが窺われる。
・現天皇と安倍は、
世代が近いこともあったか、初めから話があった。
内奏の際には天皇が安倍に、
「またいつでも来てくださいね」
と歓迎したという。
・安倍から甘さが消え、
政治家としての凄みが出てくるようになったのは、
やはり第一次政権退陣後の
雌伏の5年を経てからだ。
・周囲への感謝を度々口にするようになり、
人情に厚く、それでいて政局を巡っては、
冷静かつ緻密な戦略性を持つ。
最後は天運に任せると、
達観した様子も窺えるようになった。
★コメント
長年、安倍さんの近くでみてきた、
岩田さんの文章表現は、深い。