◆立花隆『政治と情念。権力、カネ、女』を読み解く
★要旨
・田中角栄は、「汚れ役」だった。
・汚れ役というのは、
表に出たら「汚い」と思われて、
世の指弾を浴びるに違いないすべてを、
それは自分の責任でございますと泥をかぶり、
親分は、真っ白のままにしておく役である。
・角栄の汚れ役は、カネ作りだけでなく、
カネを使っての政治工作とか、
スキャンダルの封じ込めとか、
多面的にやっていた。
・角栄は、
自分がそういう役回りを引き受けることによって、
自分の政治力を高めつつあるのだという、自覚があった。
・政治の本質は、利害の調整にある。
・政治力というのは、
妥協しがたい立場に立つ対立者間に、妥協を作り出す能力、
つまり合意形成能力ということ。
・それに必要なのは、
妥協点を見つけ出す能力であり、
当事者双方に、それを飲ませる能力だ。
・そういう能力において、角栄は特に優れていた。
・佐藤栄作首相は「沖縄返還」実現のため、
日米繊維交渉をまとめあげることが、
最大の急務と考え、田中角栄をその任にあてた。
・それまでの二代にわたる通産大臣である、
大平、宮沢でも問題は解決できなかった。
・角栄は、通産大臣に就任わずか3か月で
このどうしょうもなく難航していた日米繊維交渉を、
独特の手法で片づけてしまった。
・これが高く評価され、角栄は、
ポスト佐藤の有力候補として急浮上した。
・政治的勝負に勝つためには、
味方をたくさん作るより、
敵を少なくするほうが大事である。
・そのために角栄は選挙のときは、
自派に属さない、場合によっては敵となる政治家にも、
カネを渡し続けた。
・角栄のイメージは、
強気一辺倒で押しまくるタイプの政治家というところだが、
現実の角栄は、決してそうではない。
・角栄は、押してよく引いてもよい、
硬軟両様の戦術の使い手だった。
いくつもの予備プランをもっており、
あらかじめ手を打っておくという、
したたかさを持った戦略家だった。
田中真紀子には、そういう側面はまるでない。
・そのため、角栄は、
表面的には敵対者とされている陣営に対しても、
裏で秘かなよしみを通じておき、
必要とあれば、いつでも裏チャンネルを生かす、
ということができる人だった。
・角栄は、そういう隠れチャンネルを
多方面にたくさん持っていて、
それが角栄の比類ない政治取引能力の源泉になっていた。
★コメント
立花さんのほうから見る、
角栄論は、また別の面白さと学びがある。