◆須田仁之『恋愛依存症のボクが社畜になって見つけた人生の泳ぎ方』を読む


★要旨



・「おまえら、ホンキでやっているの!オレはホンキなんだよ!」



孫正義社長はホワイトボードの黒板消しを

壁に思いっきり投げつけた。

人がカンカンに怒って紅潮する顔を

見ることも初めてだった。

昭和の学園ドラマのワンシーンに

タイムスリップでもしたような気分だった。



・2001年、

まだソフトバンクはプロ野球の球団も持っていない。

携帯電話事業もやっていない。

一般的な認知度は低かった。



・孫さんにとって当時、

ソフトバンクがヤフーBBという

ブロードバンド通信事業へ参入することは、

事業家として大勝負の場面であったことは

間違いない。



・現場は日々昼夜を問わず働いており

決して手を抜いているわけではなかった。

しかし、やろうとしていることがあまりに無謀なのと、

スケジュールがドンドン前倒しになっていったりして、

まるで戦場のような混乱の日々だった。



・会議で孫さんから

「今すぐタスクを1000個書け!」

と言われた。

僕は頭を冷やすために一旦外に出て

朝の隅田川を眺めるべく逍遥する。



→川の流れに漂うかのように泳ぐカモは、

同じ都会の波にのまれている生命体の僕と比較すると

圧倒的に幸せそうに見えた。



「ああ、生まれ変わったら隅田川のカモになりたい」



・当時の会議はいつもエンドレスだった。

3時間でも4時間でもぶっ続けだった。



・なんでそんなに会議に時間が取られるのかというと、

今では考えられないけれど、

ソフトバンクは通信事業については

まったくのド素人だったからだ。



・「通信事業」というものを誰も分かっていなくて

わかっていない人たちで

分かっていないことを話しているので、

全員が物事をちゃんと理解するのに

時間がかかっていた。



・会議に駆り出される各社の社長もみな、

「通信」の素人であり、

何となく自分の見解を言っているような、

言っていないような、

孫さんのご機嫌だけをとっているような、

そんな雰囲気だった。



・ドタバタがあり、

本プロジェクト始まって以来の明るい報告があった。


「一般顧客宅にて、無事、通信が繋がった模様です」



→孫さんはものすごく上機嫌になった。

「やった!繋がったぞ。ほら、みんな、やっぱり繋がったぞ」

少年のような喜び方だった。

「よし、今日はみんなで焼肉でも行くぞ!」

30人近くが駅前の焼肉屋「トラジ」に集められた。



・恐らく、孫さんだけがこの「繋がった」という

事象の意味を噛み締めていたのだろう。

その後、ソフトバンクは本当に通信事業者になるわけだが。

今考えればこれは未来に向けた大きな一歩だった。



★コメント

筆者の文章力の面白さに圧倒された。

おもしろい経験と語彙力をもっていると

良い本ができる。