◆川上洸『ベルリン陥落1945』を読み解く



アントニー・ビーヴァー著

川上洸、翻訳。



★要旨



・1944年12月、

ドイツのグデーリアンは、兵士の直感に頼って、

もっとも危険なポイントを見分けようとしていた。

それがどこなのか、疑問の余地はなかった。


東部戦線の軍諜報機関トップであり、

参謀本部東方外国軍課長ラインハルト・ゲーレン少将の

情勢分析書が、ブリーフケースのなかにあった。


ゲーレンは、赤軍が1945年1月12日前後に、

ヴィスワ川正面から大攻勢を仕掛けていくるおそれあり、

と判断した。


諜報部の見積もりでは、敵戦力の優位は、

歩兵で11倍、戦車で7倍、

火砲と航空戦でそれぞれ20倍に達していた。



・ゲーレンの諜報資料を使って、

グデーリアンは東方の大攻勢に備える赤軍の集結状況を説明し

攻撃は3週間以内に始まるだろうと、

最高幹部たちに警告した。

ヒトラーはそれに聞く耳を持たなかった。



・ゲーレン少将のソ連軍戦力見積もりは、

たしかに過大ではなかった。

バルト海からアドリア海まで伸びる戦線に、

赤軍は670万の兵力を擁していた。



・アイゼンハワーは、

石橋をたたいて渡る自分の広域正面戦略を、

英国が批判しつづけていることに、ひどく苛立っていた。

チャーチル、ブルーク、モントゴメリー元帥が

そろいもそろって、ベルリンを目指す強行突破作戦を望んだ。

その主な理由は、政治的配慮だった。


赤軍到着前に、ベルリンを占領すれば、

スターリンに対抗する力関係の回復に役立つ。



・最高司令官としてのアイゼンハワーは、

できるかぎり損害を少なくして

戦争を終わらせることが任務だった。



・ナチ指導部では、ベルリン攻防戦が

この戦争の山場になることを誰も疑わなかった。

ゲッベルスの口ぐせは、

「ベルリンを制するものは、ドイツを制する」(マルクス)

だった。


他方、スターリンのほうでは、

マルクスのこの言葉の続きを知っていたに違いない。

「そして、ドイツを制するものは、欧州を制する」


だがアメリカの戦争指導者たちは、

明らかに欧州のこういう金言を知らなかった。


英国陸軍参謀総長ブルークは、

「アイゼンハワーは、疑いもなく魅力的な人物だが、

戦略的な思考力はきわめて乏しい」



・電力供給が止まり、

ラジオ放送も聞けなくなると、

口コミが唯一の情報源となった。

ベルリン全部をはせめぐる流言の大半は

根も葉もないデマだった。



・スターリンは、

ベルリン占領をソ連の受け取る正当な報酬とみたが、

とてつもなく膨大な出費に比べて、

実入りは、がっかりするほど少なかった。


最大の目標は、ベルリン帝国銀行だった。

しかし、ナチの金塊の大半は、すでに西方に移されていた。



★コメント

最大の激戦でもあったベルリン攻防戦。

そこには膨大なドラマがあったようだ。


 

 

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