◆鶴岡路人『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』を読み解く



★要旨



・欧州で発生してしまったこの戦争にNATOやEUを含む欧州がいかに関与し、

どのような影響を受けてきたかを、政治・外交面に着目して論じたい。



・米欧の同盟であるNATOの関与が深まるとともに、

欧州全域への影響が大きくなったことから

今回の戦争は『欧州戦争』と呼ぶべきものへと変容した。



・欧州からみたロシアは、異質だし辺境である。

しかしそのうえで、歴史的にも文明的にも文化的にも、

欧州の一部だった。

端的にいって、

『くるみ割り人形』のないクリスマスは寂しすぎるのである。



・今回の『併合』なるものの最も深刻な影響は、

ロシア・ウクライナ戦争の正式な和平合意が

成立する可能性がほとんどなくなったことだ。



・ロシア国内では正式の手続きを経て承認され、

それら地域は憲法上、ロシア連邦の一部という話になった。

『併合』なるものの決定を覆すことは、

ロシアにおいては難易度が極めて高い。



・欧州にとってのアフガニスタンは、

『米国の戦争』でも『米国の敗北』でもなかった。

欧州・NATOの戦争であり、突然にやってきた敗北だった。



・この戦争は特徴的なはじまり方をした。

前年秋からロシア軍部隊がウクライナ国境に集結しはじめ、

緊張が高まっていた。



・ロシア側は、ウクライナ侵攻の意図はないとしつつ、

いつでも実際に侵攻可能な装備を着々と前線に配備していった。

その数は10万名をはるかに超えた。



・状況を注意深く監視していた米国は、

ロシアに侵攻の意思があると判断し、

ロシアに警告しつつ欧州諸国への情報共有を進め、さらには、

ロシアの侵攻意図やその方法を「暴露」する手段に出たのである。



・オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)

と呼ばれる分野の新たな発展が重要だった。



・OSINT自体は決して新しい手法ではない。

機密情報ではなく、

公開されている情報をつなぎあわせて

真実を突き止めようとすることを指すが、

SNSによる情報を網羅的に扱うことで、

従来とは桁違いの情報量を実現し、

精度の高い分析が可能になった。



・例えば指導者の演説についても、

引用すべき箇所は関心や目的によって異なって当然である。

そうである以上、自ら原典にあたることが重要である。

記者による切り取りからみえるものと、

自ら原典をみたときに広がる世界の間には大きなギャップがある。



・今回の戦争におけるウクライナ人によるロシアへの抵抗は、

人間が命をかけてでも守りたいものは何かという、

戦後の日本人がほとんど問われることのなかった問題を投げかけている。



・ロシアによるクリミアの違法且つ一方的な併合、

およびドンバス地域への介入とそれに伴う激しい戦闘によって

多くの犠牲者が発生したことは、

結果として、多くのウクライナ人を反ロシア的にした。



・以上に、今回の戦争を理解するには欧州の理解が不可欠であること、

そして、今回の戦争によって欧州が大きな転換点を迎えつつあり、

そのことが今後の国際関係全般にも無視できない影響を

及ぼすと考えているからである。

それは、

今回の戦争を「欧州戦争」として捉える見方である。



★コメント

あらためて、

この戦争のスケールの大きさを感じ取った。