◆内藤陽介『現代日中関係史:第2部』を読み解く
副題→切手・郵便に秘められた軌跡。
第2部、1972ー2022
★要旨
・中華世界には、
「指桑罵槐」(しそうばかい)、
すなわち、表面上はある人物・組織を批判しながら、
その本当の批判の対象は別の人物・組織であるという、
独特の政治文化がある。
・日中関係は、この指桑罵槐がもっとも明瞭に
観察されるフィールドの一つといっても
過言ではない。
・鄧小平の時代、中国は共産主義の思想を
実質的に棄却することで経済成長を実現し、
権威主義体制を維持するための新たなイデオロギーとして
「愛国」を強調するようになった。
・対日関係と歴史問題は、
しばしばこの「愛国」の強弱をコントロールするための
調整弁になっており、この微妙な匙加減の一部は、
中国の切手にも浮かび上がってくることがある。
・それらを丹念に拾い集めるとともに、
日本切手に描かれた中国のイメージを組み合わせることで、
従来とは違った角度から、
複雑極まりない日中関係史を俯瞰できるのではないかと考えた。
・ブラックスワンはきわめて希少な鳥として、
1697年に発見された際には当時の人々からは
驚きをもって迎えられ、そこから
「物事を一変させること」の象徴とも
されるようになった。
・中越戦争は、客観的にみれば、
ベトナムに対する中国の侵略戦争であったが、
西側はこれを強くは避難せず、
日中関係にもほとんどダメージを与えなかった。
・それどころか、
日中関係の安定を最優先に考えていた大平首相は、
中国の近代化を支援するとの大義名分の下、
中国への円借款供与を実現するための
具体的な準備を開始する。
・国交正常化交渉時の外相として
中国が戦時賠償を放棄した「善意」を
無邪気に受け止めていた大平は、
賠償の代わりに円借款で埋め合わせをすることが
中国との友好を増進させ、
国益に寄与すると本気で信じていた。
・賠償を放棄するという「恩」を着せることにより
日本に心理的な負い目を与え、
延々と援助を引き出そうと狙っていた中国によって、
これ以上、都合の良い相手はいない。
・「軍国主義復活」と攻撃されていた中曽根首相でさえ、
「日中友好」に疑問を抱かず、
過去への反省のしるしとして
中国への経済協力は当然である、
と明言してしまうのを目のあたりにして、
中国側が
「日本、与し易し」
と理解するのは必至だった。
★コメント
客観的に、事実を積み重ねて、
歴史をみていくという内藤氏の手法に学ぶ点は多い。
◆まぐまぐメルマガ『国際インテリジェンス機密ファイル』ご案内。
ご登録はこちら。
http://www.mag2.com/m/0000258752.html
★