◆小泉悠『ロシア点描』を読み解く
→点描(てんびょう)
副題→「まちかどから見るプーチン帝国の素顔」
★要旨
・私はかつて自分で落語をやっていたことがあり、
つい話を面白い方向に持っていっていまいがちな悪癖がある。
・そうして多少盛った表現の中から、
「商業出版的に特においしい」部分が強調されると、
出来上がったロシア像はひどく歪んだものになってしまう。
・これではいかんということで、
「語り下ろし」は参考程度に留め、
事実上いちから書き直して出来上がったのが本書です。
・ロシアマフィアとタマネギ屋根。
・ロシアのマフィアは、刑務所に入れられる度に、
正教の象徴であるタマネギ屋根の聖堂の図を
入れ墨するそうだ。
・タマネギ屋根の数が多いほど、
何度も「ムショ入り」してきたことになるわけで、
これが彼らの勲章であり、箔付けにもなる。
・シベリアの流刑地でも、
「刑期が長い人ほど偉い」「年寄りを敬え」
といった独自のルールがある。
・「自分たちは法律には従わないかもしれないが、
掟には従う、非常に真っ当な存在だ」
という自負がある。
その根底には宗教的敬虔さがあり、
タマネギ屋根の入れ墨はそれを象徴している。
・ロシアは格差社会だ。
エリートとそうでない人では、
まるで違う暮らしをしていて、お互いあまり交わらない。
・ロシアのブロガーというのは、とにかく怖いもの知らずで、
メトロ2の痕跡以外にも打ち捨てられた軍需工場に
入り込んで写真や動画をアップする人もいる。
・過激なことをするほど再生回数も伸びるので、
こうした活動が一種のブームになっていた。
しかし最近では政府の統制が強まり、
下手なことをするとFSBに拘束されることもあるので、
下火になってきた。
・ロシアにはものすごく「濃い」オタクたちがいて、
たとえば軍事マニアなんかは、ロシア国防省の発注公告とか、
軍需産業の決算報告書とかを読んでるわけ。
・そうすると、全く公表されていなけれども、
こんな新兵器を開発しているらしいとか、
北方領土に建設する新兵舎の収容人数が○○人だから、
配備兵力もこのくらいだろう、
なんていうことが割り出されてしまったりする。
・2010年代に入ると、風向きが変わり、
ロシア政府もインターネット監視に本腰を入れ始めた。
・ロシア政府はインターネットを「西側のインフラ」
と捉えている。
★コメント
さまざまな角度から、その国を検証することが大事だ。