◆篠田英朗『戦争の地政学』を読み解く



★要旨


・「英米系地政学」は、世界を「大陸国家」と「海洋国家」のせめぎ合いとみなす。

その二元的な世界観において、

「圏域」思想が前提とする多元的な世界観とは鋭く対立する。



・マッキンダー・スパイクマン理論によれば、拡張主義政策をとる「大陸国家」と、

その封じ込めを狙う「海洋国家」は、ユーラシア大陸の外周部でぶつかり合う。



・言うまでもなく、

これは、19世紀にロシアの南下政策を封じ込めようとしたイギリスの外交政策を裏付けるグレート・ゲームを説明する理論であり、

20世紀に拡張主義をとるソ連を封じ込めようとしたアメリカの冷戦時代の外交政策を説明する理論である。



・現代ロシアの著名な「地政学」理論家であるアレクサンドル・ドゥーギンは、

「大陸系地政学」理論の特徴を顕著に持つ議論を行っている。



・ドゥーギンが代表する「ユーラシア主義」の思想では、

ユーラシア大陸の中央部にロシアを中心とする「圏域」が存在する。



・「英米系地政学」理論にそって言えば、

ウクライナは、現代国際法秩序にそって、「大陸系地政学」の世界観を否定し、

ロシアの「勢力圏」に服することを拒絶しているだけである。



・ただし残念ながら、

全く異なる世界観を信じ切っているプーチン大統領をはじめとするロシア人たちは、

このウクライナの行動は、ロシアの「勢力圏」を否定する裏切り行動とみなす。 



・中国は、ロシアとは異なる態度をとりながらも、この世界観の対立を、

ロシア寄りの立場で注視している。

ロシア・ウクライナ戦争の衝撃は、世界的規模での世界観の対立となっている。



・中国は、大陸に圧倒的な存在感を持って存在している一方で、

遠大な大洋に通ずる沿岸部を持っている。 



・中国は、歴史上、大陸中央部からの勢力による侵略と、海洋での海賊等も含めた勢力による侵食の双方に、

悩まされてきた、

「両生類」として生きる運命を持っている国家だとも言える。



・中国は、

陸でも海でも覇権を取ろうとしている国家というわけである。



・そんな中国が現在進行系で進めている構想・戦略が「一帯一路」だ。 

アジア、中東、アフリカ東岸、ヨーロッパにかけて経済協力関係を築く戦略である。



・南下政策の伝統的なパターンを踏襲するロシアの影響力の拡張に対して、

一帯一路は、ユーラシア大陸の外周部分を帯状に伝って、中国の影響力を高めていこうとする点で、

異なるベクトルを持っている。



★コメント

やはり、地理と歴史を深く学ぶことが大事である。