◆渡瀬裕哉『なぜ成熟した民主主義は分断を生み出すのか』を解説します。



★要旨



・民主主義社会におけるアイデンティティの分断は、選挙のマーケティング技術の発展によってもたらされているものなり。



・アイデンティティの分断の発見は、人間社会に社会的豊かさをもたらすものなり。

多種多様なアイデンティティの構成要素は、人生に無限の選択肢をもたらす。



・現代社会において、アイデンティティの分断は、全く赤の他人であるメディアや政治関係者によって、

おもに政治に関する話題の形をとって、押し付けられてくるケースが、ほとんどだ。



・大学の知識人が発見し、メディアが拡散し、政治家が利用するアイデンティティの分断は、

多様な側面を持つ「あなた」という存在を極めて、画一的で単純なものにしてしまうものだ。



・選挙活動の基本原理は、

「人々の分断をあおり、自らの支持者を投票に行かせるように、動機づけること」にあり。



・そのため、選挙の現場では、無限ともいえるほどの社会問題が、陳列棚に並べられている。

人々の間に生じている「アイデンティティの分断」については、いやが応でも目に入ってしまう。



・選挙期間となり、公営掲示板にポスターが貼られる段階になると、

プロ筋では「選挙活動の大半の結果は、すべてわかっている」といわれる。



・実際に日本で行われる選挙活動は、ほぼ無意味であり、単なるお祭り騒ぎに過ぎない。

実際には告示日の前までに、すべての仕込みは終わっているのだ。



・選挙活動において、最も基本となる要素は、直筆で書かれた支援者の名簿であり、

候補者が何票取れるかという票読み作業の根幹なり。



・地方議会選挙で、ポスターに載っている脂ぎったオジサンが当選できる理由は、

名簿収集がしっかりしているからである。



・統一地方選挙の結果は、名簿の数と、実際の接触数がすべてなり。

マスコミからのアンケート回答について、選挙結果への貢献は低い。



・アメリカ民主党のポリティカル・コレクトネス(ポリコレ。政治的正しさ)を尊重する人々は、

おもに大学関係者の知識人によって発見される「アイデンティティの分断」を利用しているのである。



・アメリカ共和党を支持する保守派にとって、重要なのは、

「米国人であること=米国の建国理念を受け入れること」なり。



・米国は、英国による課税に反対して、独立・建国された経緯がある。

アメリカの保守派は、政府が人々の経済生活や精神生活に介入することを

徹底して拒否するのである。



・米国の建国理念を体現する象徴は、合衆国憲法なり。



・他者が押し付ける「アイデンティティの分断」に飲み込まれることなく、

自らアイデンティティを選び取る人々が、世界で目覚め始めているのである。



・アイディンティティの主体的な再構築作業は、

われわれの政治の健全性を取り戻す上でも、

重要なものになっていくに違いない。



・私たちのアイデンティティを強烈な形で分断する要素は「通貨」の可能性あり。

ブロックチェーン技術などを用いた、新たに「越境する通貨」の挑戦を受ける時代になりつつある。



・中国がデジタル人民元を採用した場合、

一帯一路に協力する国家群に属する国民は、通貨として脆弱な自国の法定通貨よりも、

デジタル人民元で日々の取引を行うことを望む可能性あり。



・政治が求める「アイデンティティの分断」から脱却し、

自ら意識してアイデンティティを取捨選択し、

優先順位づけすることが、とても重要なり。



・「アイデンティティの分断」は、政治家・知識人・メディアによって、

ほぼ無限に新しい切り口を伴って、何度でも繰り返し仕掛けられるのである。



・自らで、アイデンティティに関する判断を行う力こそ、「自由意思」なり。



・「自由意思の活用」こそ、アイデンティティが引き起こす諸問題に対する、

もっとも効果的な処方箋なり。



・通常、国家を作る際の建国理念や、その歴史には多様な魅力が内包されているものなり。

その中から、自分が納得できるものを選べばよい。



・実際、保守派であったとしても、

建国の理念をすべて忠実に理解し、守れる人は滅多に存在しないものである。



・前近代的なアイデンティティとは、

身分・血縁・地縁などの自然発生的な基礎環境によって付与されるものをいう。



・前近代的なアイデンティティに覆い尽くされないための対処には「読書」が有効なり。



・相対的な未開な環境で育ってしまった場合、自らの頭で思考する能力が奪われてしまいがちになってしまう。

ただ、思考力がないのではなく、単に知識不足によって、考える視座が不足しているだけである。



・前近代的なアイデンティティの分断から抜き出るためには、

情報のシャワーを浴びることが必要なり。



・書物は、先人の知恵の固まり。

読書によって多様な考え方や視点を身につけることで、

前近代的な思考から抜け出すために、何をすべきか悟ることができる。



・各個人が共通の目的を持って、

協力し合える分野について取り組むことが正しい選択なり。

「しなやかで強靭なアイデンティティ」を持つ人々が携えると、

次第に社会における自由の領域が拡がっていくのである。



・政府に何でもかんでも問題解決を求めない。

「政府は余計な手を出さない」という困難な道を選択しよう。



★コメント

多くの学びがある。繰り返し読み込みたい。


 

 

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