◆小林吉弥『角栄の歯ぎしりが聞こえる』を読み解く
★要旨
・重要人物の発言を分析し、動向を読む。
田中角栄は、国会議員がいつ、いかなるところで、どんな発言をしたかを、
瞬時にしてキャッチできる情報網をあまねく張ってあった。
これらの発言を分析、政局動向を読みとっていた。
・人脈&情報網があればすべてが読める。
ある側近議員は次のように語る。
「いわば一般情報ではない独自の情報網ということでしょう。
この場合、独自の情報網とは結局は田中さんの広大な人脈によるものといってもいい。
元気な頃は、新聞社の幹部と定期的に懇談会をやってはマル秘情報をとっていた。
全国津々浦々には田中シンパの県議、市議などの地方議員、
同じく地方経済界の有力者などの情報網も完備されていたといっていい」
・闘争にはシナリオが不可欠である。
・「日本列島改造論」作成過程にみる官僚の使い方。
この「改造論」は、ときの自民党都市政策調査会の会長だった田中が音頭をとり、
「都市政策大綱」としてまとめたものが下敷きになっている。
田中の、これにかける意気込みは大変なものであった。
当時、一千万円の自費を投じ、調査会のメンバーに派閥を超えての人材を集めた。
・この会議で出た意見、議論を最終的にまとめたのは、早坂茂三ら私設秘書であったが、
ここまでの間につねに官僚組織が入り組んでいる。
この原案は、次いで大蔵省の主計局、主税局、理財局に回されて数字的な裏付けの吟味を受け、
非公式に了解をとったうえで、やはり官僚政治家である愛知揆一らのOKをとった形で出来上がっている。
・田中の重要政策の形成過程は、まず高級官僚の助言があり、
各省庁からのデータを駆使し、その上で信用できる身内としての私設秘書が、
まとめ上げるというのがパターンであった。
・法律をつくることで新たな人脈を築いた。
そして田中人脈の拡大がまた法律をつくっていった。
・田中はこう語っている。
「私は法律や予算や制度のコンサルタントだ。
法律というものはものすごく面白いもので、生き物だ。
使い方によって、変幻自在、法律を知らない人間にとっては、
面白くもない一行、一句、一語一語が、じつは大変な意味を持っている。
すごい力を持っている。生命を持っている。
壮大なドラマが、その一行一句に込められている。
それを活用するには、法律に熟知していなければならない」
・高い動機があってこそ人はついてくる。
組織というものは、指導者の思想、哲学、それなりの高い動機があって初めて機能する。
経営でいえば、これがあって初めて部下が動いてくれる。
思想、哲学、高い動機とは、これはまた物事の方針と置き換えてもいい。
経営でいうなら、これは確固たる社是社訓である。
★コメント
高い志というのは、少数の人の心に響く。
この強い少数がいれば組織が動く。
コアなグループを大事にしよう。