◆渡瀬裕哉『儲かる!米国政治学』を解説します。




★ポイント



・アメリカの連邦予算は、上下両院の連邦議会議員によって、

半年以上におよぶ長期間のパワーゲームで決定されるのである。



・アメリカの予算をめぐるポイントは、歳出小委員会や予算決議で政治的懸案の予算が盛り込まれるか、

上下両院で予算通過の十分な票数が確保できるか、ということになる。



・アメリカの予算策定を主導する連邦議員が、どのようなバックグランドつまり背景を持つ人々なのか、

という情報は、とても付加価値が高いものである。



・米国の連邦議会の下院は、各議員のことは知らなくても、派閥の動向をとらえておけば、

連邦予算に関する見通しを見誤ることは、ほとんどない。



・予算策定で実際に問題になる存在は、連邦上院議員である。

かれらは全米50州から2名ずつ選出される合計100名である。



・米国では、党議拘束が存在しない。

そのため個々の上院議員の権力が非常に強い。

誰がどの委員会ポストに就任しており、予算法案にどのような態度を示しているかは、

死活的に重要な意味合いを持つのである。



・アメリカ連邦議員の派閥およびイデオロギー傾向、連邦議会のしくみ、大統領の予算教書をふまえることで、

米国政治を分析する際の解像度は、大幅に向上するのである。



・アメリカの連邦予算の見通しや傾向を知ることは、世界の現状を知ることと、ほぼ同義と言ってよい。

他国にとっても、自国の政策方針に影響を与える米国の予算を無視することは、不可能である。



・アメリカの予算と同様に重要な政策が、「大統領令」と「規制政策」である。



・共和党の主な支持基盤の一つが、シェールガス&シェールオイルの開発業者なり。

共和党は、この事業を事実上、経営困難に追い込むCO2排出規制や、水圧破砕法などに対する環境規制に反対しているのである。



・あらゆる分野の規制について、共和党は規制廃止、民主党は規制強化の立場で対立している。

これは、個人・企業・コミュニティの自助共助を強調する共和党と、政府の公助を強調する民主党との違いを反映している。



・共和党は、規制の増加は経済成長を阻害して、ビジネスイノベーションを阻害すると考える。

そのため各省庁の規制の経済コストにキャップをかけ、規制個数自体を削減することを重視しているのだ。



・政策の方向性は、大統領令でわかる。

政治的な膠着状態を打開するために、頻繁に利用される手法が、大統領令である。



・トランプ大統領は予測不能な大統領といわれていたが、実際に大統領令や大統領覚書さえ、しっかり読み込んでいれば、

トランプ大統領の行動は、事前に予測することは十分に可能であったのである。



・トランプ大統領が導入した具体策は、

「新たに規制を1つ作る際に、不要な規制2つの廃止を求める2対1ルールの創設」や、

「各省庁に規制コスト増加の見える化・抑制を求める規制会計導入」などであった。



・トランプ政権において、2017年度の1年間で、

連邦政府は計画させていた1579本の規制について、635本を撤回させ、244本を活動停止、700本を延期させた。

それにより将来にわたる約1兆円(81億ドル)に及ぶ経済効果を上げたといわれる。











★コメント

実践的で、実務に使える米国政治の内幕である。

本書を読み、ニュースを見ることで、世界の理解が深まることは、確実である。