◆松本剛史『世界を動かすコモディティー・ビジネスの興亡』を読み解く


タイトル→ザ・ワールド・フォー・セール。


著者→ハビアー・ブラス

翻訳→松本剛史


★要旨



・五〇代半ばだったテイラーは、

イギリスのエスタブリッシュメントらしい気さくな魅力と、

石油トレーダーには必須の冒険好きな気質とを併せ持っていた。



・そして石油と金、権力が密接にからみ合う世界で、

地政学的にきわめて重要な意味を持つ取引を前に尻込みするような人間ではなかった。



・地下資源に恵まれたペルシャ湾岸の小国カタールは、

リビアの反政府勢力を政治的、財政的に支援する重要な存在となり、

欧米諸国との仲介役を務めながら、武器や現金を供給していた。

とはいえ、タンカーいっぱいの石油精製品を買って交戦地帯まで届けるのは、カタール政府の手にあまる。

コモディティー商社の力が必要だった。



・カタールはビトルに、

ベンガジまでディーゼル燃料とガソリン、燃油を供給できるかどうか打診してきた。



・ビトルにはさらに別の強みもあった。

ロンドン、ワシントンとの政治的なコネクションである。



・生粋の社交家で、天性の政治家ともいうべきカリスマ性を備えたテイラーは、

与党である保守党の有力な寄付者だった。



・イギリスでは外務省の「石油スパイ」がひそかに活動中で、

カダフィ軍が燃料を入手したり、

原油を海外に売ることを阻止していた。



・テイラーとしては、

反政府勢力と商売をするのなら、

その相手がどんな人間であるかを知っておきたかった。

中東での何十年もの経験から、入念に練り上げた契約書の文言よりも、

個人どうしの確約がものを言うことはわかっている。



・ビトルがリビアで行った取引は、

コモディティー商社が現代の社会で振るっている巨大な力を如実に示すものである。



・私たちの消費の大半を根底で支えているのは、

天然資源の国際取引という熱気あふれる世界だ。



・そして、その取引を支えているのが、

スイスやニューイングランドの静かな町にオフィスを構えるコモディティー商社なのである。



・現代世界においてマネーと権力がたがいにどう作用するかを把握し、

どのように石油や金属が資源国から流れ出して、

現地の顔役や独裁者の懐に現金が流れ込むかを知るには、まずコモディティー商社、

コモディティー・トレーダーというものを理解しなくてはならない。



★コメント

おもしろ過ぎる。

商品ビジネスの醍醐味を知った。