◆高橋篤史『亀裂。創業家の悲劇』を読み解く
「ソニー創業者・盛田昭夫の長男の巨額浪費」
★要旨
・1987年8月、(盛田)英夫が代表取締役となり東京・南青山に「東京俱楽部」という会社が設立される。
東京俱楽部が掲げた目的はただひとつ、スキー場の経営である。
・名家の出である(英夫の父でソニー創業者の)盛田昭夫は
齢を重ねてもハイカラなスポーツに興じることを好み、
当時、写真も多く撮られていたから、
そのことは世間でもよく知られている。
・当初、第1期から第3期にかけ270億円を見込んでいた開発費は
難しい地形ということもあり第1期だけで
およそ500億円に膨らんだ。
・巨額の開発費は一族の最重要資産であるソニー株が
持つ莫大な価値をもっぱらあてにして調達されたのである。
・巨費を投じたスキー場はその高評価とは裏腹に赤字経営が続いた。
新井リゾート開発は現物出資されたソニー株を少しずつ売り払って
現金化せざるを得なかった。
・英夫の関心は意外な方向へと向かっていく。
ひとりの英国紳士と出会ったのがすべての始まりだ。
その人の名はバーニー・エクレストンという。
世界最高峰のモータースポーツF1の世界で多大な影響力を持つ怪人である。
・英夫はレイケイにおける会議でこう発言している。
「F1事業はハイリスクであり、投資の配当の何の保証もない。また、この貸し付けはたぶん返済されないことを認識している」
というのである。
・F1参入は最初から採算を度外視した常識外れに贅沢な、
きわめて個人趣味の色彩が濃いものだった。
・2002年シーズン、アジアテックはミナルディにエンジンの無償供給を続け、そこであえなく力尽きる。
英夫のF1参入の夢はわずか2年で何も得ることなく終わったのである。
★コメント
作った資産をいかに守るかが、大切である。