◆堀栄三『大本営参謀の情報戦記』を読み解く



堀栄三氏は、陸軍大学校出身の情報参謀である。

元々は、騎兵出身であったが、偶然が重なり、大本営の情報参謀になった。

情報には専門外であったが、土肥原将軍や寺本将軍という良き情報の師匠に出会い、情報の本質を知った人物である。





★要旨



・手に入れた情報からいかなる視点で解明して、

定められた時期までに所定の判断を作り上げていくかが情報戦士の仕事である。

戦場での情報戦士の仕事は、もっとも地味であり、学校で習ってすぐに一人前になれるものでもない。



・情報は一種の職人仕事のようなものであり、積み上げた知識と経験に基づく、体で覚えた「職人の勘」のようなものが必要不可欠である




・昔は大先輩を訪ねて有益な話を聞く習慣があった。

相手に勝つには、何をするのが一番大事かを考えるのが戦術だ(土肥原将軍)



・枝葉末節にとらわれないで、本質を見ることが重要。

情報とは相手の仕草を見て、その中から相手が何を考えているかを知ろうとするものだ。



・情報はまず疑ってかからなければダメである。

俊才は絶対に勇者にあらず、知者も決して戦力になり得ず。



・敵情を知るには、人材や金銭を惜しんではいけない。

これを惜しむような人間は、将帥でもなく、幕僚でもなく、勝利の主になることはできない。

情報収集には、最優秀の人材と有り余る金を使え。



・情報は常に作戦に先行しなければならない。

勘というのも重要な洞察であって、デタラメの出まかせではない。



・研究に研究した基礎資料を積み重ねて、その中の要と不要を分析して出てきたものが情報の勘である。

情報の職人には、経験と知識と、深層、本質を冷徹に見る使命感が大事である


・敵情判断で最大の難事は、言い切ることである。

しかも情報の判断をする者には、言い切らなければならない時期が必ずやってくる。



・情報こそ最高の「戦力」





★コメント


実際、戦場と大本営を行き来した堀氏の言葉には重みがある。

決して会議室では分からない情報が存在するのである。

路上で会議をするといいアイディアが生まれると言われるが、的を得ている。

現場をマメに歩いて、人の話を聞き、丹念に資料を分析する。

それによって人には見えないものが見えてくるのである。

これは努力をすれば誰にでも身に付けられるものだ。

そしてすべての指導者に高度な情報センスをもってもらいたい。

ましてや国家のトップは必須である。