◆小林章夫『イギリス貴族』を読み解く
★要旨
・「英国的」なものの一つに、英国の貴族がある。
その歴史は長くて極めて複雑であり、そのあり方も、代々伝わる古い家柄から、
新聞王などの実業家などの新興貴族、
そして20世紀にその制度が確立した一代貴族など、実にさまざまだ。
・さらに、古い家柄の貴族は一つの排他的なグループをかたちづくっていて、
その実態に関しては、
大多数の英国人にとっても謎だと言ってよい。
・ドラマ『ダウントン・アビー』が、人気を保っていることからもわかるように、
英国の貴族は大部分の英国人にとっては遠い存在でありながら、
演劇や小説、映画やテレビドラマなどで、
その存在はどこか身近なものとなっていて、大きな興味の対象でもあるのだ。
・英国の貴族、そして爵位を持たないアッパー・クラスの地主たちが
この国の歴史を作り上げてきたことを考えると、
それも無理のないことだろう。
貴族は英国の法律を作り、政治を司り、軍隊を指揮した。
・「午後のお茶」の習慣は19世紀半ばに、
第7代ベッドフォード公爵夫人アンナが始めたと言われているが、
今では階級を問わず、英国人にとってはなくてはならない習慣として定着しているし、
海外からの観光客に人気の「アトラクション」でもある。
・英国における最もポピュラーな観光の一つは貴族やアッパー・クラスの地主の屋敷、
カントリー・ハウスめぐりである。
・土地の収益が農業の不振によって急減したり、
相続税などの税金によって、先祖代々伝わる土地と
屋敷の維持が困難になったりしたカントリー・ハウスの所有者たちは、
20世紀の半ばから、庭園や屋敷の一部を観光客に有料で公開するという、
「カントリー・ハウス観光」によって収益を得るようになっていった。
・今では多くのカントリー・ハウスが映画やテレビドラマのロケ、
企業の研修会、そして結婚披露宴をはじめとする
各種パーティの会場提供などで収入を得ている。
・英国の首相はロンドンのダウニング街10番地の官邸の他に、チェッカーズという、
ロンドンから60キロほど離れた場所にあるカントリー・ハウスを週末用に使うことが許されている。
・これは1917年に、当時のチェッカーズの所有者だった政治家サー・アーサー・リーが、
首相の別邸として使うという条件で国に寄付したものだった。
・それまでは英国の首相はアッパー・クラス出身で、当然のようにカントリー・ハウスを所有しており、
そこで週末に人を招いて、華やかな社交だけでなく、
大事な会談なども行っていた。
★コメント
貴族の話は、歴史が絡み合っていて、面白い。