◆藤原正彦『この国のけじめ』を解説します。



★要旨



・明治時代の留学生の多くは、

古典や漢籍の教養と武士道精神からくる品格により、

海外で敬意と信頼を集めた。



・英語で話す内容を豊かにするのは教養なり。

とりわけ、日本の伝統、芸術、歴史、文学などの理解を深めることが大切なり。

外国で尋ねられるのは、こういうテーマなり。



・欧米に行って、彼らの文化文明に圧倒されそうな苦境の時は、

「私は美しい文化と情緒の地に育った」

という意識を支えにすべし。



・教養を得るには、読書が必要。

国語力を身につけよ。

多量の漢字を覚えて、読書に親しむべし。



・人間には、主軸が必要なり。

そのためには、母国語の完全習得と、それに支えられた豊富な読書を通して、

文化・教養を吸収することが不可欠。



・歴史を振り返ると、物理や数学のような、

一見何の役に立たない基礎科学を発展させた国だけが、

科学技術大国となっている。



・時空を超える唯一の方法は、読書なり。

古今東西の偉人賢人の声に耳を傾け、庶民の哀歓に心を震わせる。

このような読書の累積が教養なり。



・教養は、大局観や長期的視野につながる。

長期的視野や大局観は、リーダーとなる人の絶対条件である。



・リーダーだけが教養を積んでも、良いとは限らない。

民主主義は国民の総意に基づいて物事を決める。

国民の読書離れは、衆愚政治に成り果てる。



・祖国とは、国語なり。

ポーランドは、幾度も侵略され、地図上から消された。

先生たちは隠れて、ポーランド語で子どもたちに教えた。

地図上から消えた国を生かしていたのは、ポーランド語であった。



・危機意識の高低が、情報の重視軽視を決定する。

両世界大戦の20年間ほど、世界でもっとも優れた情報機関は、

小国・ポーランドのものだった。



・強力な情報網をつくるべし。

自ら情報を集め、分析するという基本動作、この苦労を怠ってはならない。



・情報活動とは、傍受解読分析ばかりではない。

新聞雑誌や公表された文書を丹念に拾えば、

相当の情報を得ることができるのだ。



・傍受解析や暗号の作成解読に力を入れよ。

日本のIT技術は世界的で、暗号理論の研究水準もかなり高い。

現代暗号は、数学である。

これは日本のお家芸なり。



・終戦時には、生き残った真の祖国愛が、まだあった。

極東軍事裁判における清瀬一郎弁護人など、

大国難に際しても、狼狽しない堂々たる人たちが、まだいた。



・祖国愛を培わない限り、日本は不要な狼狽を何度も繰り返してしまう。

歴史を学び、日本の誇る文学や文化に触れ、

美しい自然や情緒を歌い上げた詩歌を、暗唱朗読しよう。

偉人伝を読み、祖国への誇りと自信を育むべし。



★コメント

あらためて、何を学び、何を大切にするか、方針が決まった。