◆野上浩太郎『政治記者』を読み解く



副題。「一寸先は闇」の世界を見つめて




★要旨



・政治記者における、最大の魅力は、政局の「生き物のような展開」にある。



・昨日は確実に「こうなる」と思われた政治状況が、

今日になってアッという間に変化することがよくある。



・独裁国家や旧社会主義国ではありえないような、

予期しない変化が起こるのが議会制民主政治の特徴である。



・政治の究極の目的は、

国民生活の安定と安全の確保、そのための利害の調整と妥協であろう。



・きれいごとではすまないのが、現実政治である。



・政権に近い政治家、多数の勢力を擁する実力者とその側近、

あるいは自民党内の反主流派、あるいは野党幹部であっても、

現政権を揺さぶる力を持つ政治家の情報に価値がある。



・政局はなせ面白いのか。

価値判断抜きでいえば、生々しい権力闘争を繰り広げる人間ドラマだからである。

表向きは政策や政治理念の争いだが、

裏側には権力欲、競争意識、嫉妬、挫折感といったドロドロした感情が流れている。



・政治部の新人である首相番記者の情報は、重要である。

政権の最高責任者である首相がその日、だれに会ったのか、

その人物とどんな話をしたのかが、政局の流れを判断するうえで重要な材料となる。



・もちろん、首相自身や会談した人物が、

玄関や廊下で番記者に政局の機微に触れるようなことを

ペラペラ喋るというのはまずありえない。

しかしそれをベテラン記者たちの夜回り情報とかみ合わせると、

意外にも政治の底流が見えてくることが少なくない。



・田中角栄の金脈疑惑を徹底的に暴いたのは、

1974年10月発売の『文藝春秋』に掲載された立花隆の論文である。

土地ころがしを基本にした田中の裏金づくりの実態については、

それ以降いまだに、これを上回る内容の記事や論文は出ていないだろう。

この調査報道が「決定版」であって、

ほとんどこれに尽きるといえるのではないだろうか。



・われわれ田中番記者もまた、

田中のカネづくりの基礎が「土地」にあるらしいことは薄々知っていた。



・しかし、立花のように土地の登記簿や台帳を集める取材など

思いもよらなかったし、「ユーレイ会社」の実態を調べる意欲もなかった。

私自身は、そういう取材は率直に言って政治記者の仕事ではないと考えていた。



・ただ、立花論文を読んで「やられた」と感じたことも否定できない。



★コメント

政治記者の情報収集力も、ビジネスパーソンのやり方に通ず。

学び取りたい。