◆小川榮太郎『約束の日。安倍晋三試論』を読み解く



※要旨



・「安倍の葬式はうちで出す」

→2006年、安倍内閣当時の、ある朝日新聞幹部の発言だ。




・政治評論家の三宅久之氏は、筆者へ次のように語っている。


朝日新聞の論説主幹の若宮啓文と会ったときにね、

「朝日は安倍というといたずらに叩くけど、いいところはきちんと認めるような報道はできあいものなのか?」

と聞いたら、

若宮は言下に「できません」と言うんですよ。

で、「なぜだ?」と聞いたら「社是だからです」と。


安倍叩きはうちの社是だと言うんだからねえ。

社是っていわれちゃあ・・・。




・安倍内閣では、理念の提唱にとどまらず、教育基本法改正、防衛庁の省昇格、

憲法改正の布石となる国民投票法の制定、天下りの規制を皮切りとする公務員制度改革など、

過去半世紀のすべての首相が敬遠してきた国家の土台部分の難しい宿題を、一挙に前進させたのである。

一内閣一仕事といわれた従来の自民党政権の常識からは想像もできない濃密さとスピードだ。




・私が安倍晋三さんの面識を得たのは、平成23年10月のことだ。

物静かな微笑み、寛いだ中にも、自ずから感じられる気品と威厳の高さが印象的だった。

語り口は澱みなく、会話の中にさりげなく挟まれるユーモアは、その場を不思議な明るさで包み込む。



・安倍内閣の先代、小泉純一郎は、永田町の変人として若い頃から知られていた。

群れない。友人を作らない。孤独に強い。

強気の風貌も、歯切れの良い発言も魅力的だが、

総理就任直前まで、総理にまで上り詰めると予想した人は殆どいなかった。



・小泉政権の最大の功績は、異例の高支持率を獲得して長期政権維持に成功したことだ。

政治の安定は最大の国力だから、これはもちろん皮肉ではない。



・官邸運営の要諦は、情報と人事。

会社でも通例を無視した極端な人事をやれば、みんな不満を持って動かなくなる。

それと同じ。

官邸人事の肝は、誰を総理秘書官に据えるかだ。

ところが安倍さんは国鉄からノンキャリア官僚になった井上義行さんを据えて失敗した。

(飯島勲)




・戦争には軍師が必要だ。

しかし、安倍さんの周囲は、安倍同様の理念型の人材が多く、

水面下で暗躍する飯島勲型の凄腕の知恵袋はいなかった。



・総理在職中、病気で退陣した安倍さんについて、秘書の初村氏は次のように述べている。


「実はこうなる前に、秘書や近親者は、何度も本人に、退陣してくれ、と頼んでいました。

単なる腹痛や下痢の頻発ではすまない状況に近づきつつありました。

しかし、本人は自分でなければ果たせないことがある。

自分は松蔭先生を本当に心の師としてきた。

松蔭先生同様、死を賭しても国のために戦い抜く、自分が辞めるのは死ぬ時だ、の一点張りでした」




※コメント

今一度、安倍政権について、振り返りたい。