◆本橋信宏『鶯谷。東京最後の異界』を読み解く




★要旨



・鶯谷(うぐいすだに)は、幻の街である。

少なくとも行政的な地名としての鶯谷は、地上に存在しない。

存在するのは、山手線の駅名としてだけ。



・鶯谷駅ホームに立つと、2つの異界が眺望できる。

山手線の外側に広がるのは、乱立するラブホテル群である。

対してホームの反対側は、上野寛永寺の霊園が広がる。



・鶯谷駅は、陰と陽、生と死が併存している。

生殖に励んだ人間が人生を終え、土に還る。

駅のホームから人生の始点と終点が目撃できる。



・幼い頃のトラウマを忘れるために、

スリルを求めて過激な行動に出る心理的作用が人間にはあるとされる。



・上野駅の隣街である鶯谷は、終戦直後、

上野駅で降りた求職者が寝泊まりの宿を探す格好の場所となった。

焼け跡は宿泊施設となり、焼け残った民家はそのまま住民が暮らすようになり、

そこに現在の民家とラブホテルが入り交じる独特のエリアになった。



・陰陽道が江戸をつくった。



・江戸から東京にいたる都市の形成史は、

オカルティズムから成り立っていた。



・1590年、徳川家康は豊臣秀吉から関東への移封命令に従い、江戸城に移った。



・もっとも家康にとって関東地方に飛ばされたことは、

結果的に幸いした。

当時は片田舎でしかなかった関東平野も、

地理学上からいえば日本最大の平野であり、未開発の穀倉地帯が広がり、

漁業も林業も可能性を秘めた芳醇な土地であった。



・天下を取った家康は、広大なこの平野に幕府を開き、

太田道灌が築いた質素な江戸城を大規模な城に変えた。



・繁華街というのは、作ろうと思って作れるものではない。

繁華街の条件は、多くの人が入ってくる所であり、

適度な滞留が必須となる。



・渋谷、新宿、池袋、銀座、上野、目黒、、、

繁華街には人が集まり、通過することはない。



・鶯谷は、気取りを捨てて歩ける街だ。

鶯谷は混沌とした渦を巻きながら、今も女と男のドラマを生み落している。

また、老舗店の点在する由緒ある街、B級グルメの街、粋人の街である。



★コメント

都市のメカニズムや街歩きは、おもしろい。

歴史と地理を同時に学べる。