◆ダニエル・ヤーギン『新しい世界の資源地図』を読み解く
→副題。「エネルギー・気候変動・国家の衝突」
★要旨
・本書で論じるのは、
地政学とエネルギー分野の劇的な変化によって
どのような新しい世界地図が形作られようとしているか、
またその地図にどのような世界の行方が示されているかだ。
・変化の背景には、エネルギー分野において米国の地位が大きく変わったことと、
再生可能エネルギーや、気候をめぐる新しい政治の役割が、
著しく重みを増してきたことがある。
ここには異なる種類の力が絡んでいる。
・1つは国家の力だ。
これは経済力、軍事力、地理的条件のほかに、大規模な戦略と計算ずくの野心、疑心と怖れ、
偶発的な出来事と不測の事態によって決まる。
・もう1つは、石油と天然ガスと石炭、
風力と太陽光、それに核分裂から生まれる力だ。
・本書では、この新しい地図を読み解いていきたい。
世界における米国の地位はシェール革命でどう変わったか。
米国vsロシア・中国の新冷戦はどのように、
どういう原因で発生しようとしているか。
・いまだに世界の石油の3分の1と、
かなりの割合の天然ガスを供給している中東の土台はどれくらい不安定になっているか。
・新型コロナウイルスによってエネルギー市場や、
世界の石油を現在支配しているビッグスリー
(米国、サウジアラビア、ロシア)の役割はどう変わるか。
・シェール革命は世界のエネルギー市場を激変させ、
世界の地政学を塗り替え、米国の立ち位置を変えた。
・シェールオイルとシェールガスは、
21世紀の現在までで最大のエネルギーイノベーションであると言える。
・「ロシアの地図」では、エネルギーフローの相互作用や地政学的なせめぎ合い、
さらには30年前のソビエト連邦崩壊と、
ロシアを再び大国にしたいというウラジーミル・プーチンの宿願のせいで、
なかなか決着しない国境問題から生じる火種について論じる。
・ソ連が突然、15の独立国に分かれたことで生じた不安定な状況は、
いまだに解消されていない。
・とりわけ先行きが不透明なのは、
天然ガスをめぐって対立するロシアとウクライナの関係だ。
2014年のロシアによるクリミア併合後、
両国の争いの舞台はウクライナ南東部の戦場に移った。
・中国の「一帯一路」構想は、アジアとユーラシア、さらにその先にまで広がる経済圏を描き直し、
世界経済の中心に「中華帝国」を据えようとするものだ。
・この構想の目的は、中国製品のための市場と、
必要なエネルギーや原材料を確保することにある。
・中東では古代から数々の帝国の興亡とともに、国境線が絶えず引き直されてきた。
オスマン帝国の治世は600年続いたが、
そのあいだも国境線はしばしば変わった。
・中東には、国境線の地図以外にも重要な地図がある。
地質の地図や、油田と天然ガス田の地図や、
パイプラインとタンカーの航路の地図だ。
・今でもこの地域は、何よりもまず石油と天然ガス、
それがもたらす富と権力によって特徴付けられる。
★コメント
複雑なテーマであるが、ヤーギンの魅力的な文章力で楽しめる。