◆手嶋龍一『鳴かずのカッコウ』を読み解く



★要旨



・帝政ロシアの版図に組み入れられることを拒み、

スターリンの鉄の支配にも抗ってきたここ東ガリツィア地方は、

ウクライナ・ナショナリズムの策源地だ。



・リヴィウはその象徴として

ウクライナの気高い精神と民族文化を守り続けてきた。



・リヴィウの街ではコーヒーを飲まずに一日は始まらない。



・ポーランド国境までわずかに七十キロ。

ウクライナの西端に位置するリヴィウの丘に聳え立つ聖ユーラ大聖堂は、

ファサードの頂上に英雄を戴き、黄金のドームを朝陽に輝かせている。 この荘厳な伽藍は、

ローマ・カトリックとギリシャ正教が溶けあったウクライナ東方典礼教会の総本山であり、

ハプスブルク帝国の栄華をいまに伝えている。



・金融街シティの一角にあるレドンホール・マーケット。

分厚いガラスとロートアイアンのアーチ天井を持つ豪奢なアーケードだ。



・足元が輝くと好事に遭遇する。



・真下にパブ「ラム・タヴァーン」はある。

十八世紀末から続く由緒ある店だ。

ダークスーツ姿の男たちが、

ビールのパイントグラスを手に店の前で大勢たむろしている。

その多くがシティで働くバンカーや株を商うブローカーだ。



・一日の仕事を終えてラムに立ち寄れば、決まって顔見知りに出くわす。

ここで交わすさりげない会話、

そのなかにこそダイヤモンドの原石が混じっている。



・耳寄りな情報で暮らしを立てている彼らは誰もがラムの効用を心得ている。 

ここからほど近いセント・メリー・アクス通りには、

世界三大海運市場のひとつ「バルチック海運取引所」がある。



・船主、荷主、シップブローカーが集って情報を交換し、傭船の引き合いを行っている。

日々の船腹需要を見ながら傭船料が取り決められ、

それが世界の海運相場の指標となる。 



・バルチック・エクスチェンジを拠点とする海運関係者もまた、ここラムの常連客だ。

とびっきりの情報は、海運取引所では出てこない。

ここでの何気ない会話に埋もれている。



★コメント

情報とはなにか。

調べることの大切さとは。

物語からいろいろ学べる。