◆川口マーン惠美『メルケル。仮面の裏側』を読み解く
(副題。ドイツは日本の反面教師である)
★要旨
・アンゲラ・メルケル。
私は今、この稀有な政治家について書こうとしている。
1989年、消えゆく東ドイツの混沌の中で誕生した謎の人物。
・ベルリンの壁の崩壊とともに彗星のように現れ、
時のコール首相にその才を見出され、
東西ドイツの統一とともに出世階段を駆け上ったとされる。
・そのメルケルが、
今では世界の民主主義の守護者と言われる。
EU(欧州連合)がメルケル無しでは機能しなくなってすでに久しい。
20年この方、私はこの稀有な女性をずっと見てきた。
・その間にメルケルはどんどん変貌していった。
今ではもう、最初の面影もないほどだ。
彼女は民主主義の守護者を卒業し、もはや人権の擁護者でも、おそらく環境保護者でもない。
・だから、まず結論を言うなら、
「日本人はメルケルを誤解している」。
・EUには構造上の矛盾が多過ぎるし、
理念と現実との乖離も激しい。
・強制的に押し付けられた「連帯」が、
加盟国の上に重石のように伸し掛かり、そのEUの臨終を遅らせるために、
あちこちに点滴のように大金が注ぎ込まれているような状況だ。
こんなことが永遠に続けられるはずはない、
と誰もが気づき始めた。
・八方塞がりの中、
奇しくもEUのメリットを最大限享受し、
ひとり勝ちとまで言われたのがドイツだ。
・首相となったメルケルは、
2011年の福島の原発事故の直後に、
突然、22年までにドイツのすべての原発を止めると決めた。
それを知った国民は狂喜し、世界のお手本になるのだと胸を張った。
15年、メルケルが中東難民の無制限の受け入れに踏み出したときも同様だった。
国民はそこに自分たちの高邁なモラルを投影して高揚した。
・ただ、結論を言うなら、
そのいずれの時も、国民の熱狂はあっという間に冷めた。
・メルケルは2021年の秋に引退する予定だが、その治世16年の間に、
ドイツはずいぶん変わった。
・変化は3つだ。
社会主義化、中国との抜き差しならない関係、
そして、誤解を恐れずに言うなら、ソフトな全体主義化。
つまり、反対意見が抑え込まれ、
活発な討論ができない雰囲気がいつの間にか出来上がりつつある。
★コメント
やはり、国をみるとき、多面的に見ることが大事だ。
両面からみることで、
本質が見えてくる。