◆酒井啓子『中東の考え方』を読み解く
※要旨
・中東のそれぞれの国を見ていくと、
その根底に、この中東という地域が抱える共通の問題、共通のものの見方があることがわかる。
さまざまな事件や運動が、国を越えて、連動する。
ある出来事が、一見すると突拍子もないところに波及する。
その越境性も、中東がわかりにくい点のひとつである。
・なぜ事件や運動が国境を越えて連鎖するのだろうが。
それは、この地域の国々が、国際政治や国際経済、
歴史の大きな流れの中で、同じ課題に直面し、似たような経験をしてきたからだ。
・さらにいえば、
国際政治の歴史そのものが、中東という地域を作ってきたからだ。
・中東という言葉、地域概念自体、欧米によって導入されたものだ。
・ギリシアのアレキサンダー大王がペルシアに向けて駆け抜け、
地中海を挟んでクレオパトラがローマ帝国の皇帝たちを魅了する。
・アンダルシアでイスラーム文化とキリスト教文化が融合し、
オスマン帝国はウィーンに迫ってヨーロッパにコーヒー文化を伝えた。
フランス革命戦争の最中、
ナポレオンはエジプトに進軍して大英帝国と覇を競う。
・中東は、最初から国際政治のダイナミズムのど真ん中に作られ、
そのダイナミズムの中でどう生き延び、
逆にそれをどう利用していくか、という試練にさらされてきた地域である。
・ヨーロッパのアジア進出の過程で、植民地主義国の関心を集めた中東。
石油の発見で外国企業が殺到した中東。
・ヨーロッパで迫害を受けたユダヤ人たちが、最後のよりどころとして居場所を見つけた中東。
冷戦の前線として、ソ連とアメリカが覇を競った中東。
世界が西へ東へと動くとき、全部ここを通過していった。
その歴史が全部、中東に詰まっている。
・つまるところ、中東現代史は、もうひとつの国際政治史なのだ。
大国がさまざまな大きな政治を展開していく中で、
中東で起きたことは常にそのツケであった。
・中東と呼ばれる地域全体が、世界の動乱を映し出す鏡なのである。
・体制護持を最大の目標とするアラビア半島の国々は、
軍人のクーデターを恐れて、国軍の育成をあえて避けてきたのである。
・アラブの人々は、長期独裁政権のもとで、
自分の考えも持たず、ただ体制に従っているだけなのだろうか?
答えは否である。
・体制の弾圧や外国支配のもとで、表現や報道に制約があっても、
人々は集い意見を交わす場所を見つけて、活き活きと発信してきた。
古くはモスクや宗教儀礼の場がその空間を提供してきた。
今やインターネットや衛星放送や衛星放送が、その代表的な場となっている。
・アラブの間で常に事件や問題意識が一定程度共有され、
政治が連動性を持つことの理由のひとつにパレスチナ問題があると言ってよい。
・それぞれの国が内向きになり、
国境の外の出来事に関心を失っていく中で、
しかしパレスチナで起きている出来事は常にアラブ人の気持ちをざわつかせる。
・パレスチナ問題が解決されていない、という現実は、
アラブ人たちに
「アラブが抱える共通の問題」を意識させ続けているともいえる。
※コメント
酒井氏の中東情勢分析は鋭い。
中東の情報収集と分析を国としても続けなければならない。
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