◆櫻井よしこ『明治人の姿』を読み解く

 

※要旨


・江戸から明治期の生き方について伝えてくれる書として、
杉本えつ子の『武士の娘』がある。

『武士の娘』を読み辿れば、おのずとかつての日本人のえも言わぬ精神の高貴さ、
言動、立ち振る舞いの美しさに触れることができる。


えつ子は、代々長岡藩の城代家老を務めてきた稲垣家の六女。
明治維新後の生まれであるが、彼女の受けた教育は、まさに武家の教育そのもの。

 

・えつ子は幼い頃から、家の菩提寺の僧侶を師として学問を学んだ。
最初に学んだのは「四書」、つまり「大学」「中庸」「論語」「孟子」である。
これらはすべての学問の基礎とされた。

 

・上に立つ者は厳しく自らを律する。
それが日本人の基本的な姿勢だった。

自らを律するとは、欲望に走らないだけでなく、自分自身の立ち振る舞いにも、
厳しい規律を課すというもの。

 

・昭和天皇が戦時中、出征していく兵を閲兵されたときの話。
雨が降り始め、侍従が傘をさしかけようとすると、陛下は「要らぬ」とおっしゃり、
式の間中、雨に濡れて立ち続けられた。

そして式典の終了後、壇上から下りられると、そこには靴の跡だけが濡れずに残っていた。
つまり微動だにされなかった。

 


・習字で身に付ける「心の制御」。

準備を整えて学ぶ習字は、教養としても、また複雑なあの運筆を辛抱強く
練習することによって、精神力の抑制ということが練り鍛えられる。
精神修養の重要な柱とされる。

 

・心の制御は所作の美しさにつながる。
お茶の作法などは、まさにこれにあたる。
作法に理屈はない。
所作の美しさにも理屈はない。
何かを学ぶときは、ある時期、理屈抜きで素直に師匠の言葉に従うことが大事。

 

・茶道のよさは、美しい形が身に付くこと。
座ったときにも自然に背筋がすっきりと伸びる。
その姿勢は、女性であろうと、男性であろうと、堂々とした、とても美しいもの。


・花嫁修業は、家の伝統継承の機会。
それは世代から世代への価値観の貴重な継承の場面である。

 

・日本語でも、英語でも、古典に取り組むことは、読解力や知識をつけるだけでなく、
人間の基本を築いていくうえで本当に大切なこと。

 

・お盆をはじめ、日本の伝統行事や風習にはそれぞれ、日本人とはどんあ人たちなのか、
どんな民族なのかを伝えてくれる、興味深くも重要な意味がある。

こうした伝統や作法を守ることは、
日本人が日本人であることの意味を大切に受け継ぐことを意味する。

それは、悠久のときの流れの中にある自らの生命を自覚することでもある。


・日本人の看取り方。
えつ子は、母の体調が思わしくないとなると、姉家族と暮らす母のところで生活をはじめる。
この暮らしは、母を看取ることを前提とした暮らし。

これが日本人の人生最後の過ごし方であり、過ごさせ方であった。
最後の瞬間まで家族が一緒にいてくれるのは、死にゆく人にとって、
おそらく、一番うれしいこと。

 

※コメント

若いときは、日本の伝統やしきたりがバカバカしくも思えたものだ。
しかし、だんだんと大人になるに従い、それが貴重なものであると感じてくる。
伝統と革新を兼ね備えることによって、家族や国家は、続いていくのかもしれない。


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