◆川勝宣昭『日産自動車・極秘ファイル2300枚』を読み解く(その2)
(副題:「絶対的権力者」と戦ったある課長の死闘7年間)
※要旨
・われわれの戦いは、相手方に察知されないよう、
徹底して秘密裏に進められた。
同志たちと秘密組織を結成し、
ゲリラ戦を展開して相手側を内部から切り崩すとともに
「影のキャビネット(内閣)」として会社の表組織を動かし、
真正面からの正規戦へと持ち込んだ。
・日産の異常な労使関係。
・塩路一郎。当時、53歳。
自動車労連(現・日産労連)の会長として、
日産自動車を中心に関連会社を含めた、
いわゆる日産圏で働く23万人の組合員の頂点に君臨する
労組の首領(ドン)だ。
・日産の生産現場を牛耳り、
人事権や管理権を実質的に手中に収め、
経営陣でさえ、容易に抗えないほどの絶対的な権力を
長期にわたってほしいままにしてきた。
・塩路一郎に逆らうと日産にはいられない。
・われわれが活動を始めてほどなく
「フクロウ部隊」という秘密組織があることを知った。
塩路の意向を受けて手足となって動き、
「ダーティ」な行為もいとわない裏部隊だった。
・フクロウ部隊は工場を拠点にして
謀略活動を担ったが、その一方、
労組は本社においても、
裏の情報収集網を張り巡らせていた。
その主たる目的は、社内の幹部クラスの人間の弱みを握ることにあった。
・人間はいまの生活を失うことを何より恐れる。
家庭を持ち、家のローンも抱えるサラリーマンの場合、最大の急所だ。
そこで、社内にめぐらした裏の情報網を使って
「弱み」を握り、ときに「悪魔のささやき」で抱き込んでいく。
組織の切り崩し方を塩路一郎は熟知していた。
・浮かび上がった、塩路の「金と女のスキャンダル」。
・マル秘の「塩路会長ファイル」。
・同志は集まったが、我々はまったくの徒手空拳だった。
ただ、私が本社広報室に移って驚かされたのは、
入ってくる情報の質と量の違いであり、
情報という武器はあった。
・そこで、わたしが地下活動のモデルにしたのが、
戦後の西ドイツの「孤高の検事フリッツ・バウアー」の
地道な情報活動だった。
ナチスのホロコーストにおいて
大量移送にかかわった中心人物であるアイヒマンは
戦後、海外に逃亡していた。
そのアイヒマン追跡を始めたのが検事フリッツ・バウアーだった。
・「これからの若い世代のためにも、
過去のナチスの犯罪から目を背けたらドイツの尊厳はない」
との信念のもと、バウアーは同志とともに立ち上がった。
そして、どこにいるともわからないアイヒマンに関する
どんな小さな情報でも、見逃さず、ファイルに綴じていった。
・当時のドイツの司法界には、依然、
隠れナチスが多く存在していた。
常に監視の目が光るなかで、
バウアーたちは徹底した秘密活動を続け、
ジグソーパズルのように、ピースを一つ一つ集めていった。
・最初は穴だらけだったものが、
数年かけて次第にかたちをなし、
ついにアイヒマンが南米アルゼンチンに
隠れ住んでいることを突き止めるのだ。
・我々も情報収集から着手し、
一つ一つピースを集めよう。
そのピースが武器になる。
表向きの顔である広報室の立場を使い、
マスコミや社内から、打倒塩路の目論見がわからないように、
塩路一郎という人間に関連するあらゆる情報を
聞き出す活動を始めた。
・わたしがマル秘の「塩路会長ファイル」を
つくり始めたのもこのころからだった。
我々は情報を集めては、秘密裏に会合を開き、
ファイルを積み上げていった。
・ねらいは相手の弱点を握ることだった。
それは、塩路自身が日産の人間を籠絡する、
あるいは、追い落とすときに使う手にほかならなかった。
※コメント
激しい情報戦だ。
経済の分野でも生きるか死ぬかの戦いがあるようだ。
どの分野からでも学びたい。
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