◆川成洋『英国スパイ物語』を読み解く
※要旨
・歴史上、イギリスは、
自国が関与した戦争や厳しい対外問題において、
紆余曲折を経て終結したときには、
抜け目なく自国の利益を確保していた点が興味深い。
・1588年、
スペイン国王フェリペ2世は、
エリザベス女王のイングランドへの膺懲を完遂するため、
130隻からなる大艦隊の遠征に踏み切った。
海戦は10日ほどであったが、スペインは敗北した。
・イングランド側は、
スペイン艦隊を無敵艦隊と呼び、
「無敵艦隊撃退」を自国の自信と矜持のシンボルとするようになった。
・実はこの国難に際して、
イングランドの「秘密情報部の父」といわれた
サー・フランシス・ウォルシンガムが、
大陸に亡命中に自ら構築した個人的なスパイネットワークを活用して、
ヨーロッパ列強の宮廷、ローマ教皇庁、
さらにスペイン宮廷からも情報を集め、
スパイン側の動静をつかんでいた。
・事態にうまく対処することができたのも
これが一因である。
・諜報業務にあたってそのウォルシンガムは、
イングランドの世界戦略を担う海外秘密部員について、
「紳士だからこそ、汚い仕事に手を染めることができる」
と言い切っている。
・ウォルシンガムを先達とする伝統は、
連綿と続いたわけではないが、
戦時となれば、イギリス流の経験論が底流となり、
彼のやり方がスパイ組織の再興・構築・維持に
大いに寄与したのは、的外れではない。
・戦争に明け暮れた20世紀において
イギリスは、ヨーロッパ列強のなかで
2回の世界大戦に敗北しなかった唯一の国だ。
・世界大戦という、国家存亡に関わる危機のときに、
かつてのウォルシンガムの「箴言」を体現し、
実践する後継者的人物と組織が、
密かに活動していたのだ。
・「スパイは世界で2番目に古い職業である」
スパイの歴史は人類の歴史とほぼ同じと
考えて差し支えない。
・こうした経緯を引き継いで、
欧州でスパイ活動をとりわけ重視したのが
イギリスである。
・ウォルシンガムは、
イギリスがスペインの無敵艦隊を撃退したのちにも、
国内の諜報網や海外のスパイネットワーク維持のために
費用を投じていた。
「いかなる情報にも金がかかりすぎることはない」
という信念からである。
・彼は女王に情報機関の重要性を進言したが、
女王は彼に財政的な支援を一切、行わなかった。
・スパイであれ、
インテリジェンス・エージェントであれ、
結局は人材である。
英国の伝統的なリクルート方法は、それなりに成功していた。
※コメント
英国の情報に関する歴史を振り返ることは、
わが国にとって、とてつもなく重要なことである。
今後の研究を進めたい。
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